法務
法曹人口の大幅な増加という観点から年間の司法試験合格者を3000人とする目標がたてられ、また法曹の質の向上のため2004年から法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度が導入されました。
しかし、法学未修コース出身者の新司法試験合格率の低迷、修習終了時の考試(二回試験)の落第者の急増、弁護士志望の「就職難」等の問題が指摘されるようになりました。
法曹の質を維持しつつ、適正規模の法曹人口を確保するために、法科大学院、新司法試験、予備試験、法曹人口のあり方等についてプロジェクトチームを設置し検討しています。
また、2006年に業務を開始した日本司法支援センターの地域事務所の整備と法律スタッフ(常勤や当番の弁護士・司法書士)の確保・増員、被疑者国選弁護制度や民事法律扶助制度の充実に取り組みます。
2009年5月に施行された裁判員制度について、制度への国民の理解が進むよう引き続き広報に努めるとともに、取り調べの全過程の録音・録画による可視化、検察官のすべての手持ち証拠のリストの開示など、裁判員裁判の長期化を防ぎながら公正な裁判を行うために不可欠な環境整備を急ぎます。
さらに裁判員辞退事由の弾力的運用、守秘義務違反に対する罰則適用の限定、死刑判決の評議方法の見直し、裁判員日当の引き上げなど、裁判員となる国民の負担軽減のための制度見直しに早急に取り組みます。
団体訴訟制度の導入、公金検査請求訴訟の創設などに取り組み行政に対するチェックをさらに実効的に行えるようにします。
2004年159回通常国会で行政事件訴訟法が改正され、義務付け訴訟、差止訴訟の法定や原告適格の拡大など司法による行政へのチェック機能の強化が図られましたが、一層実効性を高めるために行政訴訟制度の第2弾の改革を進めていきます。
警察、検察等での被疑者取り調べの全過程についてビデオ録画等による可視化を図り、公正で透明性の高い刑事司法への改革を行います。
最近、富山氷見事件や志布志事件、足利事件などの冤罪事件が相次いで明らかになりましたが、最大の問題は密室での取り調べです。取り調べでの自白の強要による冤罪を防止するため、(1)裁判で自白の任意性について争いになった際に検証できるよう、取り調べの全過程を録音・録画することを捜査当局に義務付ける(2)刑事裁判での証拠開示の徹底を図るため、検察官手持ち証拠の一覧表の作成・開示を義務付ける――等を内容とする刑事訴訟法改正を実現します。
共謀罪を導入することなく国連組織犯罪防止条約の批准手続きを進めます。
政府は、国連組織犯罪防止条約を批准するための国内法整備として、共謀罪を新設する法案を繰り返し国会に提出してきましたが、民主党は、共謀罪に反対する国民の広範な世論と連携して法案の成立を阻んできました。共謀罪は、団体の活動として犯罪の遂行を共謀した者を処罰するものですが、犯罪の実行の着手、準備行為がなくても相談をしただけで犯罪となること、およそ国際性とは無縁な犯罪や重大犯罪とまではいえないようなものを含め619もの犯罪が対象となることなど、わが国の刑法体系を根底から覆しかねないものです。条約は「自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」ことを求めているにすぎず、また、条約が定める重大犯罪のほとんどについて、わが国では現行法ですでに予備罪、準備罪、幇助犯、共謀共同正犯などの形で共謀を犯罪とする措置がとられています。したがって、共謀罪を導入しなくても国連組織犯罪防止条約を批准することは可能です。
少年犯罪の防止に向け、家庭、学校など少年を取り巻く環境の整備、早期発見のネットワーク、安心して相談できる仕組み、家庭裁判所の充実強化、保護観察官の増員、少年院・更生施設を出た後の就労・社会復帰支援等の立ち直り支援策の強化等、総合的な対策のさらなる充実を図ります。「非行少年の育ち直し」という少年法の理念を堅持する立場で取り組みます。
死刑存廃の国民的議論を行うとともに、終身刑を検討、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります。
死刑制度については、死刑存置国が先進国中では日本と米国のみであり、EUの加盟条件に死刑廃止があがっているなどの国際的な動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の執行停止や死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していきます。
公訴時効のあり方については、法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度を検討します。
犯罪死体、非犯罪死体の区別なく、変死体(非自然死体)について死因究明をきちんと行うため、「死因究明2法案」の成立を図ります。わが国は約17万体の非自然死体に対し解剖率が約10%にとどまるなど、死因究明制度が諸外国に比べて貧弱であり、犯罪死や事故死を病死や自殺と取り違えるなどの問題が少なからず起きています。周辺調査、医学的調査の精度を高めることにより正確な死因の究明を行い、事故等の再発を防止し、国民の健康と安全を確保します。
刑事施設の過剰収容状況の解消、収容者の生活環境改善のための施設・職員体制の整備、適正な医療体制の整備、矯正処遇プログラムの充実、社会復帰に向けた職能教育・就労支援、保護観察体制の充実など、再犯防止の取り組みを強化します。
性同一性障害者特例法をさらに見直し、未成年の子どもがいても性別の変更ができるようにします。
「心の性」と「体の性」の不一致に苦しむ性同一性障がい者について、一定の条件で戸籍法の「性別記載」の訂正を認める特例法が2003年に全会一致で成立し、2008年には子のいる者についても子が成年に達している場合には性別変更が認められるよう法改正されました。しかし当事者や有識者からは、未成年の子がいる場合でも性別変更を認めるべきとの声が根強く、改正附則の検討条項に従って一層の見直しを進めるべきであると考えます。
重国籍容認へ向け国籍選択制度を見直します。
日本では1984年の国籍法改正により「国籍選択制度」が導入され、外国人との結婚や外国での出生によって外国籍を取得した日本人は一定の時点までに日本国籍と外国籍のいずれかを選択することとなりました。法改正以後出生した者がその選択の時期を迎えており、就労や生活、父母の介護などのために両国間を往来する機会が多い、両親双方の国籍を自らのアイデンティティとして引き継ぎたいなどの事情から、重国籍を容認してほしいとの要望が強く寄せられています。こうした要望を踏まえ、国籍選択制度を見直します。
民法の成年年齢、少年法の成人年齢を20歳から18歳に引き下げるとともに、その他の分野の法律・制度についても新たに18歳以上20歳未満の者を成年者として取り扱うために必要な法制上の検討・整備を進めます。
2007年に成立した憲法改正国民投票法で投票権年齢が18歳と定められたことに伴い、同法附則で国は公職選挙法の選挙権年齢の18歳への引き下げ、民法の成年年齢の18歳への引き下げ、その他の関係法令について検討し同法が施行される2010年までに必要な法制上の措置を講じることが定められています。
※選挙権年齢の引き下げ参照人権侵害を許さずその救済を速やかに実現する機関を創設します。
民主党が2005年の162回通常国会に提出した「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案」(人権侵害救済法案)では、内閣府の外局として中央人権委員会、各都道府県に地方人権委員会を設置し、人権侵害に係る当事者への助言・指導などの一般救済手続きと調査・調停・仲裁等の特別救済手続きを行うことができるよう定めています。報道機関による人権侵害については特別救済手続きの対象とはせず自主的救済制度をつくる努力義務を定めています。
先進国中もっとも冷たく厳しいと言われる日本の入管・難民認定行政、難民への生活支援、難民申請者への処遇を改めるため、「難民等の保護に関する法律」を制定します。
わが国が1981年に批准した難民条約の趣旨にのっとり適正かつ迅速な難民認定を行うために、難民認定行政を法務省から切り離し、内閣府外局に難民認定委員会を設置するとともに、難民認定申請者や在留難民等の生活の支援に関する法的規定を整備します。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が認定した難民は、原則として受け入れることとします。
人権侵害の救済機会を広げるため、国際機関に対し個人が直接に人権侵害の救済を求める制度(個人通報制度)が適用されるよう、政権獲得後速やかに関係条約の選択議定書の批准等の措置をとります。
個人通報制度を規定する人権条約には、女子差別撤廃条約選択議定書、自由権規約選択議定書、拷問禁止条約22条、人種差別撤廃条約14条があります。
明治初期に作成された地図をいまだに登記所の公図として用いていたりするために、登記所の地図に記された境界(筆界)と現況が著しく異なってしまっている地域が少なくありません。こうした状況を改善するため、地図整備についての国の責任を明確にし、筆界特定手続きの職権開始制度の導入など正確な登記所備付地図の整備を加速します。
サービサーによる強引な債権回収が社会問題化していることから、サービサー法を改正し、禁止される取り立て行為を明示するとともに罰則を全般的に強化します。
具体的には、(1)債権回収にあたって債務者の事業の継続・再建、生活の維持、保証人の資力等に留意(2)保証人に対する債権譲渡等の通知義務を明定(3)貸金業法に準じ取り立て行為に関する規制内容を明示し罰則を全体的に引き上げる――等の法改正を行います。
※選択的夫婦別姓の早期実現参照 ※嫡出推定制度の改善参照 ※性的虐待・性的搾取から子どもを守る参照