7.会談・視察概要 |
イスラエル |
■モッシェ・カツァブ大統領
5月2日10:00〜10:40、エルサレム大統領府 |
カツァブ大統領との会談 |
●岡田代表の発言概要は以下の通り。 |
- 今日、イスラエル・パレスチナの和平に対する期待感が高まっている。
- アッバス・パレスチナ評議会議長にお会いして、和平の問題に真剣に取り組んでいることに感銘。和平の問題の進展は、世界の人々の望んでいること。テロの問題の根源ともいえる。歴史的に非常に困難を伴うことであることは承知しているが、日本国民も強い期待を寄せている。
- 自分は野党党首だが、中東和平については与野党を超えて支援。(自分のイスラエル・パレスチナ訪問は、与野党を超えた支援ということについて)日本の国民に対するメッセージにもなる。
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●カツァブ大統領より以下の発言。 |
- 日本とイスラエルの関係は、進展している。日本とイスラエルは、民主的な歴史を持っている。二国関係は重要である。
- 和平の問題は、民族にとって大事。アッバス議長の意向を私も信じている。彼の持っている気持ちは良くても、気持ちだけでは十分ではない。残念ながらテロの動きは続いている。過去12年間、パレスチナ問題に直面してきた。オスロ合意、またロードマップの歴史的な取り組みもあった。これらによりイスラエルははじめてパレスチナ国家を認めた。さらに、ガザの入植地からの撤退も決めた。オスロ、ロードマップ、ガザからの撤退という歴史的な決定を成し遂げたにもかかわらず平和は訪れていない。
- 過去5年間、テロは悪化。確かにアッバス議長が選出されたことは期待できることであり、彼を支援するためにやれることはやる。軍事活動も縮小。500人の囚人を解放、さらに400人を解放しようとしている。西岸の治安権限も縮小し、アッバス議長次第では、さらに治安権限の縮小も行う用意がある。すでにチェックポイントの数を減らした。労働許可証も認め、労働者を受入れることも可能。
- テロは少し平穏化しているように見えるが、実際、平穏ではない。今、多少平穏なのには、いくつかの理由による。(ア)現在、イスラエル軍、GSS(情報機関)が有効な措置をとっている。(イ)アブ・マーゼンの(テロへの取り組みに関する)発言が肯定的に受け止められている。(ウ)主な理由は、ガザからの撤退の様子見ということである。テロが停止さえれば対話を続けることが出来る。テロをやめることが出来れば和解もできると信じる。テロをやめることが出来なければ、和平を逃すことになる。
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●上記の大統領の発言に対して、岡田代表より以下の発言。 |
- アッバス議長にお会いして、議長が自らの生命をかけて懸命な努力をしていると感じた。(大統領より、確かにテロをやめたらとは思っているだろうが、努力が十分ではない、とのコメント有。)
- それぞれ歴史的問題を抱えている。アッバス議長の考えが、パレスチナ全体にいきわたっていない、という側面もあると思う。
- いかなるテロも許されるべきではないと、国際社会が言い続けることが大事。しかし、アッバス議長が失敗すれば、過激な指導者が台頭するかもしれない。その意味でもきちんとサポートしていくことが重要。
- 色々な問題あるのは承知している。ガザからの撤退にとどまらず、西岸からの撤退も、ロードマップに沿って解決していくことを申し入れておきたい。
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●上記の岡田代表の発言に対して、大統領より以下の発言。 |
- 西岸からの撤退には交渉が必要。ガザからは一方的に撤退を決めたが、西岸は交渉が必要。アッバス議長を支援していきたいが、イスラエルの中のバスやレストランでテロが起きることを我慢することは出来ない。
- (岡田代表より、お互いの国民がいい方向に向かっていくべきだと感じることが問題の解決に必要であると言及したのに対し、)2つの民族双方が和平を重要と感じることは大事だが、より重要なのは指導性である。言葉だけではなく、行動に移してこそ国民はついてくる。
- 今後、テロが起こった場合、これまで以上の悲劇が起きるだろう。向こう6ヶ月が重要。我われは最後通牒を突きつけている。6ヶ月の間にガザから撤退するが、その間にテロの問題で何をするか。100%の結果を求めているわけではないが、100%の努力を求めている。残念ながら十分な努力をしていない。
- (岡田代表より、パレスチナの自治評議会選挙も予定されており、この数ヶ月が重要な時期であろう。このチャンスを逃すと悲劇的な事態になりかねないとのことだが、両国の指導者が大局を見て両首脳会談に臨まれることを期待している、とコメントしたのに対し、)首脳会談は実現するだろうが、パレスチナ自治評議会選挙については、現在、良い兆候が見られない。ハマスが勢力を盛り返すだけで、(イスラエル・パレスチナの)交渉が更に困難になるだけだ。
- (岡田代表より、そうであるなら尚更、アッバス議長の求心力を高めるために交渉を前進させることがイスラエルにとって大事では、との指摘に対して、)その通りである。しかし、ロードマップの第一条にテロをなくさなければならないとある。テロについての取り組みはまだ十分でない。
- (岡田代表より、高速を走っている車を急に止めることは出来ない。希望を持たせるためにも、入植地、分離壁、難民問題を前進させるべきである、と発言があったのに対し、)壁と言われたが、政治的意味は一切ない、安全保障上のフェンスである。恒久的なものでもなく、暫定的なものである。これはテロとの戦いに効果的だ。現在、半分出来ているが、テロが続くようなら最後まで作り続けなければならない。イスラエル・パレスチナ間で国境問題に合意するなら、その国境線に移すことも出来る。(代表より、分離壁を先日見たが、兄弟が会えないなど、生活に影響を与えている。イスラエルが同じ目にあったらどういう気持ちになるか、考えれば分かることである、と発言したのに対し、)確かに家族の分断には細心の注意を払っている。こういった害は、交渉に悪い影響を与える。しかし、テロの状況にかんがみれば、フェンスをとることは難しい状況。フェンスは、イスラエルの国民の命を守っている。
- (岡田代表より、憎しみの連鎖をやめること、また、テロという厳しい現実がある中で躊躇もするが、お互いが寛容になり希望を与えないと、解決は難しいのではないか、と述べたのに対し、)誰も、国連もテロを止めることができない。テロを恐れる状況が 出来ている。
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■トミー・ラピード・シヌイ党(野党第一党)党首
5月2日12:15〜14:00、昼食懇談(市内ホテル) |
●岡田代表の発言概要以下の通り。 |
- イスラエル・パレスチナ間の和平の問題は重要。チャンスを生かして和平を実現してほしい。イスラエルの優秀な若者に国際舞台でもっと活躍してもらいたい、との発言があった。
- テロの犠牲者にお悔やみを申し上げる。いかなるテロも許されない。アッバス・パレスチナ自治評議会議長は、多くの問題と戦っているとの印象。シャロン首相等イスラエル側の努力に敬意を表するが、アッバス議長の努力に目を向けてほしい。
- (パレスチナ側の腐敗に関し)パレスチナ側に対し、援助受け入れにおける透明性を求めた。
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シヌイ党党首との会談 |
●前原議員の発言概要以下の通り。 |
- 10年前にゴラン高原へのPKO派遣の調査のために当地を訪れ、ラビン首相(当時)とお会いしたのが忘れられない。ラビン首相は、日本はパレスチナ、エジプト、ヨルダンに支援してほしいと述べていた。今日の「黄金の機会」を捉えて和平進展を望むところであり、日本も支援する。
- パレスチナで一定の支持を得ているハマスを潰すようなことは、血みどろの争いを惹起することとなるのでアッバス議長にとり受け入れ困難ではないか。
- 樽床議員より、客観的に情勢を見ることが出来る人がリーダーになれば、和平の見通しは更に高まると思う、との指摘があった。
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●ラピート党首の発言概要以下の通り。 |
- 自分は過去に2回訪日し、日本の文化や戦後の復興を高く評価してきた。イスラエルにも豊かな文化と歴史があり、活発な人物交流によって2国間関係の進展を願っている。
- イスラエル内政は逆説的であり、シヌイは野党だが政府の分離計画を支持。地域の和平への願望の表れと理解頂きたい。日本も和平に貢献できると信じている。個人的には70%の確率で和平がなると思っているが、客観的には50%くらいであろう。和平プロセスは、入植者等の反対勢力によって危機に瀕している。日本を含む世界各国がイスラエルによる努力を評価していると確信。イスラエルが目指しているのはロードマップへの復帰。ロードマップによれば、アッバス議長がテロ組織を解体すること、及びイスラエルが入植活動を停止することがそれぞれの義務とされている。
- テロとの戦いは日・イスラエルの共通の関心。パレスチナの経済改善がテロの基盤を小さくする。日本のパレスチナ支援は良心的。我々は我々の約束を果たす。テロとの戦いがパレスチナとの関係の原点であるが、アッバス議長は十分努力をしていない。(入植地の拡大停止が第一歩との樽床議員の発言に対し)原則的にはその通り。テロが起きるとイスラエルがパレスチナを非難し、イスラエルが新しい建物を建てるとパレスチナがイスラエルを非難するのが現状。映画の「羅生門」の状況に似ている。
- パレスチナに多くの資金協力が行われているが、過去の支援の多くはパレスチナの政治家のポケットに入っている。汚職や腐敗を止めるのが先決。イスラエルがパレスチナ経済を支援する余地はあるが、テロリストの見極めが難しいので、労働力の受け入れも容易ではない。
- (ハマスの政治プロセスに参加に関し)イスラエルはパレスチナの政治形態を強制できない。PLOはユダヤ人国家の殲滅を追求していないが、ハマスはユダヤ人国家の殲滅を追求している。政治活動を続けながらテロを行うのならヒズボラと同じであり、受け入れられない。
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■エフード・オルマート副首相
5月2日14:00〜14:30、通商産業労働省 |
●岡田代表の発言概要以下の通り。 |
- イスラエル・パレスチナ間の和平の問題に関しては、与野党共に努力するとの立場である。
- 日本の国連常任理事国入りに対するイスラエルの理解に感謝。更に一層イスラエルから協力が得られることを期待する。
- アッバス自治評議会議長と会談し、イスラエル及びパレスチナ双方の努力を実感することができた。和平の進展は、イスラエル・パレスチナのみならず、世界にとっても、特にテロ根絶の観点から意味があることである。今日のチャンスを活かして、確固たる前進をしてほしい。
- 「分離壁」は、自分で実際に現場を見たが、パレスチナ人にとり、家族や友人の分離という大きな問題を起こしている。これ以上の壁の建設を行わないよう配慮を求めたい。
- テロを制止する必要があるとの点は、アッバス議長に対し直接述べた。議長は暴力を否定する旨述べていた。テロの停止が直ちに実現するとは思わないが、その方向に歩んでいることはたしかである。時間が必要であることも理解すべし。 テロがなくならないと、次のステップに進めないとの対応であれば交渉は行き詰まってしまう。そのようなことがないようにお願いしたい。
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●オルマート副首相の発言概要以下の通り。 |
- 訪日の際、お目にかかったのが、この度の貴党首のご来訪は重要であり、おそらく当地における新しい雰囲気を現場で感じられていると思う。先週木曜日、プーチン露大統領が来訪し、昨日からは、エルドアン・トルコ首相が当地を来訪中である。トルコはイスラム教国であるが、イスラエルにとり、イスラム諸国との関係強化は重要である。シャ ロン首相も、訪日を心から楽しみにしている。
- 「分離フェンス」の問題は、テロの問題がなくなれば必要がなくなるものである。(会談場所に飾ってあった写真を示して、)岡田代表の背後の写真は某所のフェンスであるが、そのフェンスがなかったとき、当該イスラエルの町は毎日数千発の弾丸をパレスチナ側から受けていた。そのような事情も理解してほしい。分離計画は最後のステップではない。今後も、すべてのことを一緒に行う用意がある。この分離計画の実施後は、次のステップについてパレスチナ側と話し合う用意がある。
- (岡田代表より、テロがなくならければ次に進めないというのであれば、交渉が行き詰ってしまう、との発言に対して)柔軟に対応する。
- (岡田代表より、ハマスの政治参加に関する質問に対し、)ハマスが政治プロセスに参加するからといって、テロを止めるかどうかはわからない。ただ、イスラエル政府は、選挙によって選ばれたパレスチナ自治政府と交渉するとの立場である。その上で、ハマスが政治プロセスに参加し、テロを止めるというのであれば歓迎する。
- (岡田代表より、寛容性をもって対応してほしいと述べたのに対し)寛容性に関しては日本から学ぶべきことが多いと認識している。
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