コンテンツを再生/利用するにはプラグインが必要です。

民主党サイトアーカイブ

現在のウェブサイトはこちら
2011年6月22日以前の情報その他で、新サイトに盛り込んでいないデータを掲載しております。
アーカイブTOP > 活動報告 > 民主党中東・スーダン訪問団報告書
活動

民主党 中東・スーダン訪問団 報告書

7.会談・視察概要
パレスチナ
■エラカート・パレスチナ解放機構(PLO)交渉局長
4月30日10:40〜11:30、ラマッラのPLO交渉局事務所

エラカート・PLO交渉局長との会談
    岡田代表の発言概要は以下の通り。
    1.

    当地には96年にパレスチナ選挙監視団の一員として訪問した。その団長は、小 渕議員で、選挙監視の際、故アラファト議長ともガザにおいてお目にかかる機会 があった。その後、さまざまな情勢の変化があったが、現在は中東和平への機運 が盛り上がっており、嬉しく思う。

    2.

    与党と民主党は、パレスチナ支援に関しては意見の相違はない。与野党を超えて 中東和平問題に取り組んでいきたい。日本の果たすことのできる役割を検討した い。

    3.

    民主主義は重要であるが、それぞれの国にあった色々な形の民主主義があってい い。一つの価値観を押し付けるのではなく、パレスチナにあった形の民主主義を 推進する必要があるのではないか。

    エラカート局長の発言概要以下の通り。
    1.

    (日本に期待する役割)日本に対して期待したい役割は、イスラエル撤退後のガ ザにおける第三者としての役割である。具体的には、ガザ空港の管理をパレスチ ナ自治評議会と協力してお願いしたい。既に米国に対しては、公式にエジプトと ガザとの国境管理に関し第三者としての役割を要請しており、欧州にはガザ港の、 日本には空港の管理をお願いしたい。日本が、中東において果たす役割は、和平 への政治的貢献、安定のための貢献、民主化支援、経済発展支援である。

    2.

    (パレスチナの民主化)民主化は国家の安定化の鍵であり、民主主義により、教 育を振興し、経済を発展させ、女性の権利を確保することによってのみ、過激派 を打ち負かすことができる。7月のパレスチナ評議会議員選挙に際し、二度目の 選挙監視のため再びパレスチナを訪問されることを歓迎する。いろいろな形の民 主主義があるが、民主主義そのものに違いはない。アラブ諸国の指導者たちは民 主主義を推進できない理由をあれこれ言うが、責任は指導者たち自身にある。民 主主義の欠如が結果的に過激派を助けている。

    3.

    (治安の確保問題)パレスチナに求められているのは、政治的な多様化と権力の 統一である。現在は、パレスチナには軍もなく、空港も港も機能していない。イ スラエル軍は、各市に侵攻し、自治区の警察施設も統治インフラも2002年の 西岸侵攻によりほとんど破壊されてしまった。我々は、パレスチナ治安機関の再 建に関する協力を求めている。米国やロシアに装備に関する支援を要請している が、これは、戦車や装甲車を求めているということではなく、警察官のためのピ ストルや機関銃、弾丸を求めているだけであるが、イスラエルが拒否している。 パレスチナの治安機関に最低限の装備がないと過激派に対処することはできない。

    4.

    (パレスチナの政治課題)現在、パレスチナ評議会が政治課題としてもっとも重 視しているのは、(ア)民主化特に選挙の実施、(イ)経済改革、(ウ)教育改革、 (エ)治安と法の支配の回復である。

    梁瀬議員より、エラカート局長が挙げた4点については同感であり、それぞれの課題は 相互に関連性を有しており、同時並行的に進展させなければ良い成果は得られないだろ う。自分としては特に経済改革に関し、具体的な詳細をお聞きしたい、と質問があった。  これに対し、エラカート局長は、経済改革については、これから撤退が行われるガザ地 区の貧困が深刻な状況にあり心配している。2003年の12月にPLO交渉サポート ・ユニットの調査チームがガザの経済状況を調査したが、その結果、イスラエル側の状 況認識と概念的な違いがあることが明らかになった。今後はガザの経済を労働集約的な 産業形態から生産物重視の産業構造に変化させていく必要がある。現在のガザの経済情 勢は悲劇的であり、撤退後の経済復興のための計画が存在していないのが問題である。 日、米、欧州諸国によるガザ撤退後の支援を歓迎するが、総合的な経済復興のための計 画が必要である。このことは、2日前にウェルチ米国務次官補と協議した際にも要請し た。ウォルフェンソン世銀総裁がカルテットのガザ撤退担当特使に任命されたことを歓 迎するが、日、米、欧州が中心になりドナー諸国がガザ撤退後の「デイ・アフター」の ための総合的な経済開発計画を作ることを求めたい。このような総合的な経済開発計画 があれば民主的選挙の実施等の政治日程も容易になる。ガザの経済は我々にとって炎の ようなものであり、その影響は西岸にも飛び火する。うまくコントロールできればそれ から暖を取ることができるが、扱いを誤れば火傷を負う。経済はガザ撤退後の和平プロ  セスの鍵である。
    前原議員より、ロードマップについて、最終的な合意のための考えが欠如していると思 われるが、最終的合意に向けて、互いに主張しあうだけでは解決できない問題があると 思うが、入植地の問題、難民の帰還権の問題等、これら困難な問題についてどこに妥協 点を見出していくのかと、質した。これに対し、エラカート局長は、ロードマップはそ の第三段階において、イスラエルが67年の国境のラインまで撤退しなければならない ことを明記している。また、入植地、エルサレム、難民の帰還権については最終的な交 渉により、これまでの国際的な諸決議にもとづき解決されるべきことが明確にされてい る。既にパレスチナ側は大きな妥協をしている。イスラエル側の入植地拡大といった行 動は二国家による解決の構想を破壊するものである。
■マフムード・アッバス・パレスチナ自治評議会議長(アブ・マーゼン)
  4月30日12:00〜12:40、ラマッラのパレスチナ自治評議会議長府、
  ラフィーク・フセイニ首席補佐官同席。
アッバス議長との会談
    ●岡田代表の発言概要は以下の通り。
    1.

    日本国民は貴議長の来訪を楽しみにしている。日本の国会においては、与野党と も中東和平問題に高い関心を持っているが、残念ながら中東と日本の距離が遠い こともあって日本国民のレベルでは必ずしも関心が高くない。そのため、長官か ら直接国民に語りかける機会を持ってほしい。

    2.

    96年のパレスチナ選挙の監視団に参加した際に見た一票を投じるパレスチナの 人々の喜びの表情は忘れられない。自分たちの手で自分たちの代表を選ぶのだ、 民主主義に参加しているのだという喜びであった。その後は、和平交渉が停滞し た時期もあったが、現在、和平に向けた進捗が見られることは喜ばしい。このチ ャンスを活かしてパレスチナとイスラエルの歴史的和解が成し遂げられることを 期待。

    3.

    アッバス議長は、パレスチナ人による暴力、特に自爆テロについては否定的であ るが、暴力を認めない強い意志を持っておられると考えていいか。

    4.

    イスラエル側が行うべき「必要な措置」とは具体的に何か。

    5.

    日本では、与党と野党が多くの問題を巡り対立しているが、中東和平問題に関し ては、与野党の区別なく日本全体で支援していきたい。

    ●アッバス議長の発言概要は以下の通り。
    1.

    (訪日について)訪日のための準備をしているところであり、最終的な調整は残 っているが、訪日を楽しみにしている。プレスを通じた日本国民への語りかけと いうご提案については考慮する。

    2.

    (選挙及び和平プロセスについて)96年に続き、本年7月のパレスチナ議会選 挙の選挙監視にも来ていただきたい。96年には、和平に向けての大きな機運が あったが、最近の4年間は極めて悪い状況が続き、失われた4年間であったとい える。パレスチナ側は1月の選挙以降の政治プロセスを進めており、ロードマッ プ上の義務を完全に履行する決意である。ロードマップの和平構想は、二国家の 平和的共存と67年の国境までのイスラエルの撤退を基本としている。この政治 的目標をどう達成していくかが我われの課題。

    3.

    (治安について)この4年間、治安が根本的な問題であったが、我々は事態の平 穏化に取り組み、これを実現した。パレスチナの諸派全てと話し合いを持ち、平 穏化に合意した。パレスチナ内外のごく一部の者達がパレスチナ人の総意とかけ 離れた行動をとっているという意味で、完全というわけにはいかないが、比較的 平穏な状況を維持できている。こうした者達に対しては実力を持って対処する。 シャルム・エル・シェイクでの合意事項は一部しか実施されていないが、パレス チナ側は内部改革を進め、11あった治安機関の3組織への統合を実施し、年金 制度等財政面での改革も進め、将校の定年退職を断行して治安機関の世代交代を 進めている。これらの改革は、法に基づき実施されており、現在も、司法分野で の改革を実施するための法案がパレスチナ評議会(PLC)で審議されている。 長官府の改革も始めた。

    4.

    (パレスチナ人の窮状について)自分が議長に就任して100日が過ぎたところ であるが、これまで様々な改革の成果を上げてきた一方で、改革が思うように進 まない面もある。パレスチナ人は、自治区内の検問所により移動の自由を制限さ れ、分離壁の建設、入植地の拡大が続いていること、エルサレム周辺の状況が変 化にさらされていることにより大きな苦しみを覚えている。これらの問題が解決 されるためには、イスラエルがパレスチナ人のおかれた状況を理解し、それをふ まえた「必要な措置」を執るべきである。現在パレスチナの貧困率は60%に達 しており、失業率も同じような数字ではないかと思う。

    5.

    (イスラエル側の実施すべき「必要な措置」について)シャルム・エル・シェイ クでイスラエルが西岸5都市から撤退することが合意されたが、2都市から撤退 したのみである。イスラエルにより追放された64名のパレスチナ人のうち、帰 還が認められたのは20名のみである。これらの措置は重要であるし、ロードマ ップ上一切停止することが合意されている入植地の拡大が、米国すら停止を促し ているにもかかわらず、未だに継続されていることは極めて遺憾である。67年 の国境のパレスチナ領に食い込んだ分離壁の建設も継続している。また、エルサ レムにあるパレスチナ人の諸団体の活動も4年前から禁止され、これらの団体は 閉鎖されたままである。また、イスラエルによるパレスチナ人拘禁者は1万人以 上である。これらの者の大半は裁判を受けることなく拘禁されており、法に基づ く受刑者ではない。パレスチナ人に対する世論調査の結果を見ると、この拘禁者 の問題がパレスチナ人の最大の関心事項である。現在、和平に向けての「黄金の 機会(フルサ・ザハビーヤ)」が存在する。パレスチナ国民は平和と安全を必要 としており、我々はそれらを欲している。イスラエル人も同じだと思う。パレス チナ人はイスラエル人と隣人として安定と善隣関係の中で共存していく用意があ るし、そのためにできることは全てする用意がある。イスラエルからも同じこと を期待したい。我々が、また、イスラエルがこの歴史的機会を失えば、中東全体 が破壊されかねない。

    6.

    (日本に対して)我々は、日本のパレスチナ問題に関する立場、政治的支援、パ レスチナ人に対する経済援助を高く評価している。我々は日本を良く知っており、 日本人は賢明で活動的であり、世界に対して開かれた心構えを持っている。パレ スチナ自治政府成立以前から我々は日本より多大な支援を頂いており、日本政府 のみならず、他の政党の方々や日本の国民全体に対し感謝申し上げたい。

    ●前原議員より、パレスチナ国家が、西岸とガザ地区に樹立されると理解しているが、難 民の帰還権に関し、妥協が成立することはあり得るのか、との質問があった。これに対 し、議長は、現在、難民帰還権の問題は協議されておらず、その問題は避けて通ってい る。この問題についてはすでに国連安保理決議194があり、難民には帰還権と補償を 受ける権利が規定されている。最終的には公正な合意に基づく解決が規定されており、 将来的に交渉による解決を目指すのみであると、返答した。
    ●双方、日本での再会を望んで会談を終えた。
■エラカート・パレスチナ解放機構(PLO)交渉局長
4月30日10:40〜11:30、ラマッラのPLO交渉局事務所
キドワ長官との会談
    岡田代表の発言概要は以下の通り。
    1.

    日本の財政事情も厳しいが、パレスチナに対してはできるだけの支援をしたい。 日本の支援が有効に使われるようお願いしたい。

    2.

    先刻アブ・マーゼン長官と会談した際、現在は和平のための「黄金の機会」であ るとのお話があったことに強い印象を受けた。中東和平の達成は、パレスチナと イスラエルだけではなく、全世界の利益であり、是非努力を継続していただきた い。

    キドワ長官の発言概要は以下の通り。
    1.

    日本は伝統的に平和を愛する国民性であり、中東和平達成に向けて大きな貢献を してくれている。日本の中東和平問題に関する立場は、欧州のそれよりもパレス チナに好意的であり、これを継続されることを希望する。パレスチナに対する支 援については、当然これを高く評価しており、有効に活用されるように常に留意 している。

    2.

    支援の適正な利用については、むしろイスラエルとの関係において出てきていい 話ではないか。パレスチナ側においては、諸外国からの支援は1ドルたりとも本 来の目的以外に使われることはない。全てのプロジェクトはドナーとの詳細な協 議のプロセスを経て実施されており、問題は、せっかくできあがったプロジェク トをイスラエル軍が破壊してしまうことにある。イスラエルの行いは、パレスチ ナの自然な経済成長を阻害している。

    樽床議員より、(イスラエル・パレスチナ)問題の解決のためには今後も大きな忍耐が 必要なので、是非忍耐を発揮して頂きたいと、要望が示された。これに対し、キドワ長 官は、パレスチナ人は忍耐強い国民であり、今後も忍耐力を発揮していきたいが、問題 は、時間がパレスチナに味方していないことである。入植地の拡大や分離壁の建設は続 けられており、時間が経過するにつれて、イスラエルによる違法行為がパレスチナの現 状を変えていく。これは非常に厳しい問題である。他の問題については、パレスチナ人 自身の権利のために忍耐を持って取り組んでいきたい、との見解が示された。
■ナーセル・キドワ・パレスチナ自治評議会外務庁長官
  4月30日13:45〜14:30、マジュディ・ハーリディ長官補佐官同席
アブ・ディスの町の「分離壁」
右上:NGOのジュマ 右上:ジュマ氏を囲んで、左下:近寄って説明をはじめた住民
    ●2002年10月に設立された「Stop The Wall Campaign」は、イスラエルによる「分 離壁」の建設に反対する諸団体などを束ねた組織であり、(ア)「分離壁」の建設の即刻 中止、(イ)既存の「分離壁」及びゾーンの一部撤去、(ウ)「分離壁」建設のために押 収された土地の返還、(エ)土地・財産の破壊のために失われた収入と補償の要求、を 目指して活動を行っている。
    ●古代からエルサレム・バグダット間を結ぶアブ・ディスの町(エルサレム近郊)を訪問 し、町の幹線道路を真っ二つに遮断する形で建設された「分離壁」を視察した。案内役 のジュマ氏は、「同じ町に住む親・兄弟が分離壁により隔離されてしまった状況となっ ている。また、これまでエルサレムの町との結びつきがアブ・ディスの町の収入源であ ったところが大きいが、遮断され経済的にも打撃が大きい。経済的に疲弊させ、住民が 町を捨てて、他に移住するよう仕向けることが、イスラエル側の狙いである。」「(イス ラエル側は分離壁の建設をテロの防止としているが、壁のイスラエル側における)パレ スチナ人の人口比を抑えることも大きな目標だ。」と語った。
    ●「分離壁」は、全体で約750キロに及ぶ計画で、そのうちの約250キロの建設が終 わっているとの説明があった。場所によって多少異なるものの、視察しアブ・ディスの 町の「分離壁」は、高さ8メートル、幅60センチで、重さが7トンであった。ジュマ 氏は、「イスラエルは、分離壁を『分離フェンス』と呼び、パレスチナ側のテロがなく なれば撤去が可能という説明を国際社会にしているが、とてもそのように簡単に撤去で きる代物ではない。」と述べた。
    ●「分離壁が建設されている間、座り込みやデモなど、建設を阻止する行動を起こさなか ったのか」との民主党一行の質問に対して、ジュマ氏は、「無論、反対デモなどはあっ た。しかし、イスラエルは、壁を積み上げておいて、ある晩、突然それを設置してしま った。ある朝起きたらそこに壁があった、という状況だった。」と、説明した。

▲このページのトップへ