●アッバス議長の発言概要は以下の通り。
1.
(訪日について)訪日のための準備をしているところであり、最終的な調整は残
っているが、訪日を楽しみにしている。プレスを通じた日本国民への語りかけと いうご提案については考慮する。
2.
(選挙及び和平プロセスについて)96年に続き、本年7月のパレスチナ議会選
挙の選挙監視にも来ていただきたい。96年には、和平に向けての大きな機運が
あったが、最近の4年間は極めて悪い状況が続き、失われた4年間であったとい
える。パレスチナ側は1月の選挙以降の政治プロセスを進めており、ロードマッ
プ上の義務を完全に履行する決意である。ロードマップの和平構想は、二国家の
平和的共存と67年の国境までのイスラエルの撤退を基本としている。この政治 的目標をどう達成していくかが我われの課題。
3.
(治安について)この4年間、治安が根本的な問題であったが、我々は事態の平
穏化に取り組み、これを実現した。パレスチナの諸派全てと話し合いを持ち、平
穏化に合意した。パレスチナ内外のごく一部の者達がパレスチナ人の総意とかけ
離れた行動をとっているという意味で、完全というわけにはいかないが、比較的
平穏な状況を維持できている。こうした者達に対しては実力を持って対処する。
シャルム・エル・シェイクでの合意事項は一部しか実施されていないが、パレス
チナ側は内部改革を進め、11あった治安機関の3組織への統合を実施し、年金
制度等財政面での改革も進め、将校の定年退職を断行して治安機関の世代交代を
進めている。これらの改革は、法に基づき実施されており、現在も、司法分野で
の改革を実施するための法案がパレスチナ評議会(PLC)で審議されている。 長官府の改革も始めた。
4.
(パレスチナ人の窮状について)自分が議長に就任して100日が過ぎたところ
であるが、これまで様々な改革の成果を上げてきた一方で、改革が思うように進
まない面もある。パレスチナ人は、自治区内の検問所により移動の自由を制限さ
れ、分離壁の建設、入植地の拡大が続いていること、エルサレム周辺の状況が変
化にさらされていることにより大きな苦しみを覚えている。これらの問題が解決
されるためには、イスラエルがパレスチナ人のおかれた状況を理解し、それをふ
まえた「必要な措置」を執るべきである。現在パレスチナの貧困率は60%に達 しており、失業率も同じような数字ではないかと思う。
5.
(イスラエル側の実施すべき「必要な措置」について)シャルム・エル・シェイ
クでイスラエルが西岸5都市から撤退することが合意されたが、2都市から撤退
したのみである。イスラエルにより追放された64名のパレスチナ人のうち、帰
還が認められたのは20名のみである。これらの措置は重要であるし、ロードマ
ップ上一切停止することが合意されている入植地の拡大が、米国すら停止を促し
ているにもかかわらず、未だに継続されていることは極めて遺憾である。67年
の国境のパレスチナ領に食い込んだ分離壁の建設も継続している。また、エルサ
レムにあるパレスチナ人の諸団体の活動も4年前から禁止され、これらの団体は
閉鎖されたままである。また、イスラエルによるパレスチナ人拘禁者は1万人以
上である。これらの者の大半は裁判を受けることなく拘禁されており、法に基づ
く受刑者ではない。パレスチナ人に対する世論調査の結果を見ると、この拘禁者
の問題がパレスチナ人の最大の関心事項である。現在、和平に向けての「黄金の
機会(フルサ・ザハビーヤ)」が存在する。パレスチナ国民は平和と安全を必要
としており、我々はそれらを欲している。イスラエル人も同じだと思う。パレス
チナ人はイスラエル人と隣人として安定と善隣関係の中で共存していく用意があ
るし、そのためにできることは全てする用意がある。イスラエルからも同じこと
を期待したい。我々が、また、イスラエルがこの歴史的機会を失えば、中東全体 が破壊されかねない。
6.
(日本に対して)我々は、日本のパレスチナ問題に関する立場、政治的支援、パ
レスチナ人に対する経済援助を高く評価している。我々は日本を良く知っており、
日本人は賢明で活動的であり、世界に対して開かれた心構えを持っている。パレ
スチナ自治政府成立以前から我々は日本より多大な支援を頂いており、日本政府
のみならず、他の政党の方々や日本の国民全体に対し感謝申し上げたい。