コンテンツを再生/利用するにはプラグインが必要です。

民主党サイトアーカイブ

現在のウェブサイトはこちら
2011年6月22日以前の情報その他で、新サイトに盛り込んでいないデータを掲載しております。
アーカイブTOP > 活動報告 > 民主党中東・スーダン訪問団報告書
活動

民主党 中東・スーダン訪問団 報告書

7.会談・視察概要
ヨルダン
■マルワーン・ムアッシャル王宮大臣
5月1日9:45〜10:15、王宮府
●岡田代表の発言概要は以下の通り。
1.

昨年11月に民主党の鳩山ネクスト外相一行がヨルダンを訪問した際にも大変有 意義な会談であった聞いている。ヨルダンには民主党の派遣団が何度も訪れてお り、交流を深めている。

2.

昨日(4月30日)は、パレスチナ自治評議会のアッバス議長と会談し、同議長 が様々な困難に正面から取り組んでいるとの印象。 日本としても、中東和平が 少しでも前に進むように、とりわけ、「ロードマップ」に定められた目標を前進 させるために最大の努力を続けていく。

3.

イラクにおいては移行政府が成立したが、憲法制定や年末の選挙等の重要な政治 課題が待ち受けている。イラクがこれらの課題を予定どおり無事に乗り越えられ るかが問題。民主党は自衛隊の派遣に反対するなど与党との政策面での違いはあ るが、イラクを支援するという点については完全に一致しており、日本もしっかりとバックアップしていく。


ムアッシャル王宮相との会談
    ●ムアッシャル王宮大臣の発言概要は以下の通り。
    1.

    ヨルダンと日本は昨年外交関係を設立して50年という節目の年を迎えた。両国 は今政治的にも経済的にも堅固な関係にある。

    2.

    中東和平に関して、アッバス議長はパレスチナの指導者として最適の人物であり、 ヨルダンとしても同議長とは強固な関係を築いており、今後、和平に対して大き な役割を果たしていく覚悟である。アッバス議長の下、治安の改善が進められて おり、状況は沈静化の方向へ向かっていると評価している。

    3.

    1月に行われた選挙が重要なステップであったことは間違いない。しかし、スン ニ派がこの選挙に参加しないという過ちを犯し、結果として移行政府を作りあげ ていく過程で悪影響を及ぼした。現在の政府は暫定的なものに過ぎないのであり、 今年末の選挙を経てまた新たな政府が形成されるのであるから、1月に過ちを犯 したスンニー派が次の選挙で同じ過ちを繰り返さないよう働きかけていく必要が ある。

■バーセム・アワダッラー財務大臣
  5月1日10:30〜11:30、財務省
●岡田代表の発言概要は以下の通り。
1.

民主党として中東和平に貢献することを重視。昨日(4月30日)はアッバス・ パレスチナ自治評議会議長とお会いしたが、同議長の前向きの姿勢に感銘を受けた。

2.

日・ヨルダン関係について率直に意見交換したい。


アワダッラー財務相との会談
    ●アワダッラー財務相の発言概要以下の通り。
    1.

    3つの重要な点につき率直な考えを述べたい。(ア)まず最初にヨルダンの役割 や重要性についてである。ヨルダンは和平の問題には他のどのアラブ諸国にも先 駆けて48年から関与し続けてきている。(イ)中東における経済的、政治的改 革の問題である。ヨルダンは人口の増加とそれに伴う若年者の失業という深刻な 問題に直面しているが、これらの問題を克服し経済発展に成功した日本からの助 言や支援を是非お願いしたい。ヨルダン政府は、現在、「国民アジェンダ」とい う10ヶ年計画を策定中である。(ウ)両国間関係についてであるが、日本から の支援なしには、ヨルダンが現在のような発展を遂げることはできなかったし、 今後も発展を続けることはできないだろう。国王、国民、政府の全てが日本に対 しては深い感謝の念を抱いている。

    2.

    ヨルダンは、90年まではサウジから、90年以降03年まではイラクから石油 の需要量半分を無償で、残り半分を優遇価格で得ていた。現在は石油無償供与を 得られなくても済むような体質作りを行っているが、石油価格の高騰により政府 の負担も増すことになり、08年までの計画達成は難しくなる。それまでの間、 国際社会からの支援が必要になると考えている。石油価格の高値が続けば、財政 の均衡達成も大幅に遅れることになるだろう。

    ●前原議員より、ヨルダンは米国とFTAを締結しているが、特にイラク戦争後に米国と の関係強化に繋がる本件締結は周辺国などからの反発も予想されたと思うが、締結を決 断された理由、メリット等につきお考えを伺いたい、と質問があった。これに対 し、 アワダッラー財務相は、ヨルダンの経済発展はある意味で貿易立国である日本の発展を そのモデルとしている。ヨルダンは国内人口が530万人余りで市場規模小さいため、 世界の大きな市場を相手にした輸出を促進することによる貿易立国を目指している。こ のため、ヨルダンは2000年にはWTOへの加盟も果たしており、更に欧州諸国との 間でもFTAの交渉を続けている、との説明があった。
    ●簗瀬議員より、今回はイスラエル側から陸路ヨルダン入りをしたが、アンマン市内への 道すがら、車窓に豊かな緑が広がり、灌漑施設を整備するなど農業に力を入れているこ とを実感するとともに、ヨルダン政府の努力を評価したい。今後、ヨルダンは経済発展 のためにいかなる構想をお持ちかお伺いしたい、との質問があった。これに対し、アワ ダッラー財務相は、まず、水問題についての日本からの支援に感謝申し上げたい。水の 供給網の整備はヨルダンのみならず域内の各国が抱える構造的、基本的に重要な問題で ある。今後の開発構想について、現在、国王の指示を受け、今後10年間の開発計画と なる「国民アジェンダ」を策定中である。民主主義、多様性、法の支配、経済力の向上 を柱にした国造りを進めていく。その過程にあっては、雇用の問題、とりわけ若者の7 0%が失業しているという喫緊の課題に取り組む必要があると考えている。そのため教 育、特に職業訓練の充実を目指している。加えて、観光、工業、サービス業などの振興 に努めたく、ゆくゆくは国際市場への進出にも繋げたいと考える、との見解を示した。
    ●井上議員より、昨日お会いしたパレスチナ解放機構(PLO)のエラカート交渉局長は、 パレスチナの貧困問題解決が急務であると訴えていた。域内の安定にはパレスチナの経 済発展についても取り組まなければならないと考えるが、日本の果たすべき役割を含め てお考えを伺いたい、との質問があった。これに対し、アワダッラー財務相は、200 0年に第2次インティファーダが始まって以来、パレスチナ地域は極度の貧困に曝され ており危険な状態となっている。とりわけ、食糧不足、栄養不足が深刻化している点を 指摘したい。 パレスチナの経済発展については、まずこの地域の治安が確保されなけ ればならないと考える。今のままでは企業の進出はあり得ない。長期的には、パレスチ ナ、ヨルダンのみならずこの地域全体を対象とする包括的な発展 計画、投資促進策が 必要となるであろう。ヨルダンは現在「中東リカバリー・プラン」を策定中であり、今 月中に開催される世界経済フォーラム死海会合において公表する予定である。このプラ ンは「中東の中東による中東のための」改革を自分たちの責任として進めていくための ものであり、ドナーを募って資金拠出を求めるものではない点はご理解頂きたいが、必 要な支援は是非お願いしたいと考える。われわれは戦後復興を果たした日本の経験を知 っており、生産性向上などの点で支援が必要である、との見解を示した。
    ●樽床議員より、自分は「ジュネーブ・イニシャチブ」を評価している、とのコメントに 対して、アワダッラー財務相は、同イニシャチブは単なる政治的宣言ではなく和平の詳 細に踏み込んだものであり、ヨルダンとしては当初よりこのイニシャチブを歓迎し支持 している、との返答があった。
■アドナン・バドラン首相
  5月1日12:30〜13:00、首相府

バドラン首相との会談
    ●岡田代表の発言概要は以下の通り。
    1.

    昨年のイラクにおける日本人人質事件に際してのヨルダンのご協力に感謝。また、 日本の安保理常任理事国入りに理解を示してくれていることにも感謝申し上げる。

    2.

    和平の問題について、アッバス・パレスチナ自治評議会議長と会った際に、同議 長が強い決意をもってこの問題に臨んでいることに感銘を受けた。パレスチナ問 題を放置することがテロの温床となっているとのバドラン首相の指摘に同意する。 日本としても公正な解決に向け努力を続ける。

    3.

    イラクについては、同国が一日も早くイラク国民にとって豊かで平和な国として 再建されるよう願っている。スンニー派も参加して選挙が行われ、政府が作られ ることが重要であると考える。今後スンニー派が様々な政治プロセスに参加して いくかどうかについての見通しなどを、お伺いしたい。また、過激派の動向も含 めイラクにおける治安改善の見通しについても伺いたい。

    ●バドラン首相の発言概要以下の通り。
    1.

    この地域において日本政府が果たしている役割を高く評価している。特に、パレ スチナ国家建設に向けた日本の役割を評価しており、地域の安定化、「ロード・ マップ」に従った和平達成といった面でも更なる貢献を期待している。アッバス 議長はパレスチナ治安沈静化に最大限の努力を行っている。シャロン首相は様々 な合意事項を実施しなければならない。パレスチナ国家建設の承認と引き替えに アラブ諸国がイスラエルを承認するというサウジのアブドッラ皇太子によるアラ ブ・イニシャチブの存在も重要である。この50年以上にわたるアラブとイスラ エルとの紛争により、経済的、社会的に大きな損失を招いてきた。パレスチナ問 題を未解決のままに放置しておくことはテロに温床を与えることにも繋がり、早 く手を打たなければならない。

    2.

    イラクについては、ヨルダンはイラク新政府の成立を歓迎する。ヨルダンとイラ クは歴史的にも長い関係をもっている。イラクが多様性を保持した国家として再 建されることを望んでいる。今のところ、そのような方向に進んでいると考える が。スンニー派の更なる政治参加を期待している。今回成立した内閣には6つの 大臣ポストがスンニー派に割り当てられたと承知しており、それ以外にも次官級 の重要なポストにも多数のスンニー派が就任している。これはイラク新政府がス ンニー派の政治参加を真剣に捉えていることの証左である。イラクの治安安定の ためにはイラク治安部隊の対応能力を高める必要がある。この面ではヨルダンも ヨルダン国内において数万人のイラク治安要員の訓練を行うなどの協力をしてい る。イラク国民は米軍の存在を占領と否定的に捉えており、イラク自前の治安部 隊を育てて、米軍部隊と取って代われるような体制を早く築くべきである。また、 イラク国内に市民防衛(civil defense)の体制を構築することも必要であろう。 イラクの治安部隊が強化され米軍ととって変わるようになれば、「米国と対決す る」というビン・ラーデン等の掲げる「正当性」が根拠を失うことになるので、 この問題は一応の解決を見るものと考える。

    3.

    ヨルダンは中東の「ハブ」として機能しており、イラク問題に関しても日本はヨ ルダンの存在を大いに活用すべきである。ヨルダンは治安が安定しており、イラ クとは陸と空の便で結ばれている。イラク以外の周辺国との経済関係を深めてい く上でもヨルダンは日本にとってその拠点となり得る存在であり、そのための制 度、環境も整っている。

■ハッサン王子(元皇太子)
5月1日16:00〜16:40、王宮府

ハッサン王子との会談
    ●岡田代表の発言概要は以下の通り。
    1.

    昨年のイラクにおける日本人人質事件に際してヨルダン政府のご尽力に感謝。

    2.

    昨日(4月30日)、アッバス・パレスチナ自治評議会議長とお会いし、同議長 は和平のチャンスが目の前にあり、これを逃すべきではないと力説されていた。 日本も支援したい。 イスラエルとパレスチナの紛争は、2つの「国家」の問題 であると同時に宗教間の問題でもある。世界宗教者会議を主催されているハッサ ン王子の役割は、その意味で非常に大きいと考えている。明日イスラエル側関係 者と会う予定だが、「ロード・マップ」に沿ってそれぞれが責任を果たし、和平 を前進させるよう強く働きかけたいと考 えている。

    3.

    バドラン首相は、イラクではやがてスンニー派も参加しての政府、国家再建がな ると言 っておられたが、ハッサン王子のお考えをうかがいたい。

    ●ハッサン王子の発言概要以下の通り。
    1.

    自分は多元主義を信奉しているが、何よりもこの地域には適切な行動規範(code of conduct)が必要である。

    2.

    宗教間対立問題に関して、昨年7月に自分が主催する宗教間対話研究所の代表が 訪日し、日本側関係者と有意義な意見交換を行ってきた。同代表は今年は韓国を 訪問する予定である。この地域でも政治と宗教が分離されることが必要であり、 重要であると考えている。アラブ世界には、イスラムのイメージを正しく伝える ための「パブリック・ディプロマシー」の観点が全く欠落している。西欧諸国の 間では、イスラム主義者を、(ア)先延ばし主義者、(イ)アナーキスト、(ウ) 政治活動家の3つのカテゴリーに分類することが主流であるが、もっと幅広い観 点から中立的に宗教間問題を議論し合うことが重要であると考えている。イラク ではシーア派が実権を握っており、今後問題の種となるだろう。

    3.

    イラクにおいて、クルド、スンニー、シーアはそれぞれが異なる国家的アジェン ダを有している。今までのところ少なくとも武装スンニー・グループは政府に全 く取り込まれておらず、彼らに政治的声を挙げさせることが重要であると考えて いるが、自分としては「顔をたてる」形での解決は好まない。貧富の差や宗教対 立からこの地域には様々な分裂的要素が存在しており、スンニー派・シーア派の 間で対立感情が再燃することが懸念される。今後の10年のこの地域の安定度を 占う上で、ここ数ヶ月の動きは非常に重要であると認識している。

■バカア・パレスチナ難民キャンプ
  5月1日17:00〜18:30、ヨルダン内、国連パレスチナ救済事業機関
  (UNRWA)事業、ロジャー・デービスUNRWAヨルダン事業副主任他府
    ●1950年にUNRWAが設立されてちょうど55周年を迎える日の節目の訪問となっ た。ヨルダンをはじめシリア、レバノンなどに散らばるパレスチナ難民を支援するため のUNRWA職員は、現在、約2万5千人おり、内約6千人のヨルダンにおける職員が 約170万人のパレスチナ難民(全体約400万人)に関する事業にあたっている。
    ●バカア・キャンプは、ヨルダン最大のパレスチナ難民キャンプで、保健医療機関、教育、 福祉事業などの施設がキャンプ内にある。キャンプは、現在、約8万人の住居であり、 1968年の設立当初から人口が約4倍に膨れ上がっている。キャンプ内は、それぞれ の出身地別に区分けされている。
    ●当初、キャンプにはテントが張られていたが、時間の経過とともにテントがプレハブに 変わり、また更に難民たち自身がコンクリートやレンガのブロックであばら家を建設し ており、現在は、貧しい町並みが出来ている。小さな家に3世帯が住んでいるケースも 珍しくなく、一行は生活環境が悪い実態を目の当たりにした。
●現在、キャンプ内には学校が16校あり、一行は日本のODAで1995年に建設され た男女共学の小学校を視察した。午前、午後にそれぞれ約850人の生徒が、同校で勉 強するとの説明があり、学校内には日・ヨルダン(アラブ)の友情を示す絵などが貼ら れ、維持・管理もしっかりしていた。しかし、失業率の高さなどが深刻なわりに、進学 率・就職率などに関するデータ管理が行き届いていないなどの問題点も垣間見れた。一 行は、同小学校に鉛筆500本を寄贈した。

▲このページのトップへ