コンテンツを再生/利用するにはプラグインが必要です。

民主党サイトアーカイブ

現在のウェブサイトはこちら
2011年6月22日以前の情報その他で、新サイトに盛り込んでいないデータを掲載しております。
アーカイブTOP > 活動報告 > 民主党中東・スーダン訪問団報告書
活動

民主党 中東・スーダン訪問団 報告書

7.会談・視察概要
スーダン
■イブン・シーナ病院視察(日本ODAプロジェクト)
   5月3日9:00〜9:40、川原尚行医師案内
1985年に日本のODAプロジェクトとして建設されたイブン・シーナ病院を視察。
スーダン人によりメインテナンスもよく、機能していた。

日本からの中古の救急車などは、利用価値が高いとの説明であった。

最大の課題は、人材育成であり、優秀な医師の育成のプログラムの拡充などのニーズが高かった。

日本から寄贈された中古の救急車
■カラリ地区の避難民(IDP)キャンプ視察
   5月3日11:00〜13:00、ユニセフ(UNICEF)
カラリ地区は、ハルツーム中心部から車で北方面に1時間程の行程にあり、周辺は半砂漠の不毛地帯が広がっている。ハルツーム周辺に居住していた不法滞在者を州当局が移転させたもので、南部、ダルフール地域出身の避難民を中心に約40万人が生活している。地区一体に日干し煉瓦で建設中の家屋が数多く見られた。

土地は、州政府から無償で分譲されているとのことであるが、付近に大きな水源はなく、半砂漠を渡る熱風が吹き荒れる中で生活環境は劣悪である。

ユニセフが井戸採掘等の水衛生の他、衛生教育を兼ねたトイレ建設の職業訓練等の支援を行っている。訪問したカラリ地区の給水所は、6日前に設置されたとのこと。

岡田代表より、避難民に対して、帰還の希望を問う質問があった。避難民の1人は、「戦争がないだけ、ここでの生活の方が良い」と発言。

UNICEFの浄水支援事業視の説明

日干し煉瓦

水を運ぶロバと避難民キャンプの子どもたち
■クレメント・ワニ、バハル・アルジャバル州知事
   3日18:00〜19:00、バハル・アルジャバル州ハルツーム事務所
●岡田代表の発言概要以下の通り。
  1. 本日予定していたジュバ訪問は、飛行機のトラブルで諦めざるを得なくなったが、ハルツームで知事とお会い出来て光栄。本日、予定を変更して視察したハルツーム郊外の避難民(IDP)キャンプでは、ハルツームから移転したIDPが劣悪な環境下で生活していた。明日、ダルフールを訪問する予定。
  2. 南北の包括的和平合意の署名は歓迎すべきことだが、履行が課題。和平合意の履行を支援していくつもりである。
  3. 客観的に見れば、スーダン全体の利益にとっては統一を維持した方がよいと考えられる。州知事も、スーダンの統一を維持するよう努力して欲しい。小泉総理も南部支援を実施する方針である。

ワニ州知事
●ワニ知事の発言概要以下の通り。
  1. ジュバでお会いできずに残念だった。55年から継続してきた第一次内戦は72年のアジスアベバ合意でひとまず終結したが、その11年後に反政府勢力(SPLM)と政府の間で再び内戦が勃発した。2つの内戦は、いずれも南部の権利が認められてこなかったことが原因である。南部住民にとり内戦による最大の困難は、南部間で分裂が生じたことである。今回の和平合意は、南部住民の自決を認め、統一か分離かを自らの意思で決定するとしており大変喜ばしいものである。
  2. 南部社会での和解については、1週間程前に行われた南南対話が、大成功を収めた。一部の武装勢力が欠席したが、これは出席を拒否したわけではなく、運営上のミスで航空券が手配できなかったためである。アフリカ・センター主催で、改めてケニアのナイロビでSPLMとの対話が予定されている。
  3. (支援問題について)南部のエクアトリア地域は、長年戦場となったためインフラが完全に破壊されており、道路、保健衛生、教育等の分野で貴国の支援を必要としている。ジュバは南部の首都となる予定だが、水の問題が深刻で、井戸採掘のためにスペインの会社と契約を結んだが資金が不足している。舗装道路もなく、ブルドーザー、ローダー等の日本製の道路整備機材はあるが、内戦で破壊され、修理しようにも交換部品がない。また、最近、ジュバの市場で2度の火災と弾薬庫の爆発事故が発生したが、消火機材がなく、被害が拡大してしまった。いずれも、日本の支援が必要な分野である。
  4. 和平合意を履行していくためには、南部人はスーダン人であることに不満があるわけではないが、北部の方があらゆる点で恵まれているのは許容できない。国全体を平等にするための社会改革が必要であり、それなくしてスーダンの一体性はあり得ない。
  5. 統一が自発的な意思に基づくことを望んでいる。社会改革に関する大統領の指示は、末端まで届いていない。統一を維持するためには、社会改革に向けた大統領の指示を草の根レベルまで浸透させる必要がある。
前原議員より、ジュバではPKO立ち上げが進んでいると承知するが、PKOには何を期待するのか。道路建設、水衛生、地雷等の人道・復興支援だけを期待するのか、停戦監視を期待するのか、意見を聞かせて欲しい、との質問があった。これに対し、ワニ知事は、ジュバでは、バングラデシュ部隊が既に到着し、PKOの立ち上げ準備を開始している。我々が欲しているのは平和であり、そのためにPKOを受け入れる。PKOの主要な任務は復興であり、部隊はこの目的のために派遣されると承知している、との見解を示した。

樽床議員より、民主党は、政権交代を目指している。スーダン南部での住民投票時に、民主党が与党となり、岡田代表が総理となっている可能性もある。いずれにせよ、対アフリカ支援の重要性は、党派を超えた共通認識である、との発言があった。これに対して、ワニ知事は、「叔父との間でも意見は異なる」との例え通り、考え方は千差万別であるが、相互に尊重し合うことが重要である。先般の和平合意により一国二制度が実現する。南部住民が6年後の住民投票で如何なる意思を示すかは、それに先行する社会改革の成果次第である。東西スーダンも同じ問題を抱えている、と言及した。
■アル・ティジャニ・ムスタファ国民議会外務委員長
   5月3日20:00〜21:15、国民議会(先方:バカル外務委員会委員
   (ヌバ山地域 選出)、ロカモ議員(東エクアトリア州選出)、ファーティマ議員
   (元女性問題担当相)、 セマヤ外務省アジア局書記官

ムスタファ国民議会外 務委員長ら外務委員会委員
●岡田代表の発言概要以下の通り。
  1. 今回、スーダンを訪問したのは、両国関係の重要性によるものである。また、アフリカ問題が、G8首脳会談で重要な議題となる予定であるが、近年、対アフリカ支援額は減少しており、アフリカ地域がより注目されるべきと考えているからだ。とくに、スーダンは、長い歴史、将来の可能性の観点から非常に重要な国である。
  2. 南北間の包括的和平合意の成立を祝福申し上げる。合意の履行には困難が予想されるが、スーダン全体が豊かになるよう努力して欲しい。スーダンに対する支援の強化が必要と考えているが、支援は国民の税金を使ってなされるのであり、有効にかつ透明性をもって使って頂きたい。
  3. ダルフールでの人権侵害容疑者の国際裁判を拒否するのは、国際社会が納得せず難しいのではないかと考える。
  4. 石油は重要だが、これに依存のし過ぎた国は、経済発展に成功していない。人づくり、中小企業の育成、外国資本誘致のための環境整等地道な努力を怠らないで欲しい。
  5. 日本の安保理常任理事国入りを支持して頂くことをお願いしたい。
●ムスタファ委員長の発言概要以下の通り。
  1. 日本は、スーダンにとり重要な国である。岡田代表の党は、野党第一党としてイラクへの自衛隊派遣にも反対しており、非常に重要な党と認識。また、ユニセフ、WFP等を通じた日本の支援にも感謝。スーダンがIMFとの協定に署名した際にも、日本には支援頂いた。今後とも、二国間関係の強化を望む。スーダンは、和平合意の履行と石油分野での支援を必要としており、スーダンを理解するために必要とする如何なる情報も提供する用意がある。我々は、躊躇なく日本の常任理事国入りを支持する。
  2. 和平合意の最も重要な原則は、(ア)権利・恩恵を享受する唯一の要件は国籍であること、(イ)全ては選挙で決定されること、(ウ)権力と富が公正に配分されることである。本合意は南部のみならず、ヌバ山、ダルフール、東部を含むスーダン全土に適用されるべきものである。ダルフール問題についても、アブジャで開かれた対話を行っていくつもりであり、国際社会が間違えたシグナルを送らなければ、和平合意に 至ることができる。
  3. スーダンの司法制度は犯罪者を処罰する能力がある。安保理決議1591(制裁決議)、1593(ICC付託決議)には同意できない。
  4. オスロ支援国会合では、貴国から寛大な支援を頂き感謝している。支援は、必ず実際的にかつ透明性の下で使わせて頂き、私利私欲のために使われることはない。
バカル議員より、和平を永続的なものとし、持続可能な発展を確保し、スーダンが自力成長の機会を得るためには、友好国の支援が不可欠である。国の大部分は農村であ り、経済開発プロジェクトが必要である。中間製造業、インフラ整備、人材育成のための各種キャパシティ・ビルディングについても支援が必要である。また、環境問題への配慮も忘れてはならない、との説明があった。
ファーティマ議員より、日本人とは、女性問題、ユネスコ等に関する仕事でご一緒したことがあるが、非常に誠実な人々であった。日本は、隠されたアジェンダを持って権謀術数を使うことはしない。これは我々の倫理感と一致するものである。日本には、特に技術移転を期待したい。また、国連と世銀が共同で実施したJAM(合同調査ミッション)は、分野別に当国の支援需要を調査し、報告書をまとめているので、参考にされたい、との発言があった。
簗瀬議員より、2点申し上げたい。第一に、分裂すれば半分、協力すれば2倍となることを忘れないで頂きたい。統一は、スーダンにとり利益となる。南北間の協力を促進するキャッチフレーズを設定するのも一案かも知れない。第二に、石油については、南部地域について語られることが多いが、他の地域では産出しないのか教えて頂きたい、との言及があった。これに対して、ムスタファ委員長より、「1人で不可能なことも2人なら」という言葉もある。助言に感謝する。石油については、試掘はまだ行われていないが、ダルフール地域でも、また中部地域でも、東部地域も含め、スーダン全域で産出する、との説明があった。
前原議員より、PKOなど、日本の支援への期待について話を聞かせて欲しい。いかなる形での支援を希望するのか。具体的には、(1)自衛隊派遣、(2)資金援助、(3)技術支援、(4)技術要員派遣といった選択肢が考えられるが、スーダンの希望はどこにあるのか、との問いかけがあった。これに対して、ムスタファ委員長より、資金援助、技術支援、技術要員の派遣は希望するが、部隊の派遣は希望しない。日本は大国であり対米追従ではなく、国民の意見を反映させる形で、国際社会の中で存在感を示して頂きたい、との見解が示された。
■南ダルフール州のカルマ避難民(IDP)キャンプ視察
   5月4日、世界食料計画(WFP)日本事務所代表玉村美保子氏案内

WFP日本事務所代表と食料配給の説明

テントに身を寄せる避難民
現在約15万人の避難民を収容している本キャンプでは、多数の人道支援機関が活動しており、よく整備されていた。
仏系NGO、ACFの医療供給センターを視察。5歳以下の栄養失調児の療養所では、母親に付き添われた児童数十名が寝かされていた。同療養所では栄養失調児に対し、栄養剤(ACFサプルメンタリー)を配給している。
WFPと連携してワールド・ビジョン(WV)が担当している食糧配給所では、USAIDが供与した栄養バランスを考慮した「ハラト」と呼ばれる混合穀物が山済みにされていた。ロープで仕切られた食糧置き場の周囲は、配給を待つ避難民で混雑していた。WVでは避難民の名簿を作成し、配給カードと引き換えに食糧を配給している。通常7日間程かけて1回の配給キャンペーンを実施している。WV職員によれば食糧は避難民に行き渡る十分な量があるとのこと。一行より、栄養失調患者は、キャンプへの新規収容者との理解でよいか、との質問に対し、同職員は「そうかもしれない。」 と答えた。
一行は、UNICEF所管の教育施設で、鉛筆1000本を寄贈した。
■南ダルフール州、ニヤラ市内NGOとの会談
   5月4日13:00〜13:50、OCHAニヤラ事務所、ワールドビジョン、
   NRC(ノ ルウェー難民委員会)、USAID、WFP、ユニセフ、OCHA
   関係者等出席
●出席者からの説明概要は以下の通り。
  1. 本年1月末以降、治安は改善傾向に向かっており、紛争当事者間の軍事衝突は発生していないが、強盗・レイプは散発的に発生している。レイプについては、「国境なき医師団(MSF)」オランダの報告があり、約500件が発生したとされているが、この類の事件は、被害者が届出しないことが多く調査が困難であるため、実際は報告よりもずっと多いと見積もられる。
  2. 活動対象地域が広大なため、アクセスが遅れることがある。更に今後雨季が到来すると、アクセスが制限される地域が出てくるのが問題である。カルマ・キャンプは、昨年は1万5千人を収容していたが、現在はその10倍の約15万人を収容している。
■ニヤラ教育病院視察(日本NGO「AMDA」支援)
   5月4日14:00〜14:30、佐伯美苗氏他日本女性2名の案内
●同病院の検査室では、日本NGO無償資金協力で資金供与されたAMDAが活動している。病院は患者で混雑しており、廊下で寝ている患者も見受けられた。AMDAは、本年1月より活動を開始しているが、機材の関税手続き等でスーダン政府の対応に時間がかかり未だ立ち上げ段階にあった。
●看護士や研修生がボランティアとして同病院に勤務しているが、機材管理等を出来る人材がおらず、人材訓練・育成が最大の課題となっており、また、近く雨季入りすることでマラリアの蔓延が懸念されるとの説明があった。

AMDA支援のニヤラ教育病院
■アフリカ連合部隊(AMIS)
   5月4日14:30〜15:10、エマヌエル・イトカ・セクター司令官代理(ナイジェ リア人)、
   ヨン・ボクリ情報担当(カメルーン人)、ロバート・ノバ民間警察部隊長
●イトカ・セクター司令官代理の説明の概要は以下の通り。
  1. (ダルフール地域の地図を示して)2004年4月の停戦を受け、ダルフール停戦監視機構としてAMISが展開している。現在、計8セクターが設置されており、任務遂行に当たっている。ニヤラのセクター2本部には、96名の監視要員が配置されており、他にグレーダ、アトバラ等にも監視要員を配置している。
  2. AMISの主要任務は、停戦の監視、違反事案の調査、報告である。この他、部族間の対話を行っている。本セクターでは、過去2〜3週間、比較的平穏な状態が続いているが、それ以前の昨年12月、スーダン政府は、ニヤラからラバニに部隊を派遣し、民兵と一緒になって反政府勢力の拠点を攻撃し、停戦を違反した。
  3. (代表団一行の質問に答え、)本年9月に、AMISに対し、スーダン人警察官の訓練を含む新たなマンデートが付与される予定である。その前に当方よりは、民間人の保護を含むよう提案することを考えている。また、部族間の信頼醸成についても、マン デートに含めて、推進していく必要がある。
●ヨン・ボクリ情報担当の説明の概要は以下の通り。
  1. 過去2〜3週間、治安は平穏であるが、スーダン政府が、スーダン政府の支配地域内でジャンジャウィードを訓練している。
  2. スーダン政府は、ジャンジャウィードへの支援を否定しているが、我々は証拠をつかんでいる。
●ロバート・ノバ民間警察部隊長の説明の概要は以下の通り。今後は、パトロールの頻度を増加させ、部族間の対話を促進していく計画を有している。AMISでは、地域住民、人道支援関係者とも良好な関係を保ち、情報収集を行っている。現在、ダルフール上空の飛行は禁止されているが、スーダン政府は、武装ヘリは含まれていないとして、右を使用している。今後の課題として、飛行禁止対象に武装ヘリを含めるよう提案するつもりである。
■ニヤラ教育病院視察(日本NGO「AMDA」支援)
   5月4日14:00〜14:30、佐伯美苗氏他日本女性2名の案内
●ヨン・ボクリ情報担当の説明の概要は以下の通り。
  1. 本日(4日)南ダルフールを視察して、避難民が人間としての生存ラインを下回る状況に置かれているのを目の当たりにした。日本としても出来るだけの人道支援を行っていきたい。
  2. 避難民の問題は、国際社会の責任である以上にスーダン政府の問題。戦争(内戦)の責任を一方的に相手方に帰すのでは、問題が解決しない。アフリカ連合の部隊は、スーダン政府と(スーダン政府の後押しを受けた)民兵が一緒になって攻撃していると言っていた。
●ハイル外務担当相の発言概要以下の通り。
  1. 日本は重要な国で、政党間でも交流を深めていかなければならないと考えている。オスロの支援国会合での資金援助の表明に感謝している。
  2. 避難民キャンプについては、深く悲しんでいる。しかし、このような残念な事態は、スーダン政府がもたらしたものではない。反政府勢力は、警察署も破壊するなどの行為を行っている。避難民たちが自分たちの村に帰還できるようにしたい。国際社会も反政府勢力に交渉に戻ってくるように働きかけてほしい。WFPのモリス氏がまとめた報告書で、戦争(内戦)の責任は反政府勢力にあると明言している。
  3. アフリカ連合との間での交渉には私自身が参加しているが、同連合とは人道についてのプロトコール及び治安議定書にも署名している。
  4. ダルフールで人権侵害があったことに関する処罰は、(国連安保理決議1593によるICC付託ではなく)国内で適正に行う。また、今は(ダルフールについては)まだ戦争中であり、戦争の後に処罰にかけるべき。裁判には平和な環境が必要だ。(岡田代表より、国連安保理決議が採択され、国際社会がダルフールの虐殺に注目しており、国際社会を説得する必要がある、との見解が示されたことに対して、)民主党は、イラク戦争及びイラクへの自衛隊派遣に反対したと聞いており、それを評価する。ただ、ダルフール問題については、(米国の見方で見ており)米国を喜ばせる立場にあるのではないか。アフリカの問題は、アフリカの中で解決すべきことである。主導権がアフリカに残されるなら解決できる。(岡田代表より、国際社会の理解を得るには具体的な行動で示さなければならない。国際社会から孤立しないことを願う。大局を見ることの出来る政治家がいないと道を誤る。日本も太平洋戦争前、多くの指導者が流れに流されてしまった、との発言に対して、)代表の言葉を高く評価する。問題解決する固い決意がある。必ず努力する。

ハイル外務担当国務相との会談


▲このページのトップへ