【3】経済・財政・金融
税制改革
税制にとって最も重要なのは、国民の信用です。そのためには税制を簡素化し、透明性を高めるとともに、不公平感を持たれない制度へ常に改善を続ける必要があります。また現在の税制には時代遅れの面があり、新しい社会の構築や経済の活性化に向けて大胆な見直しが求められています。このような課題に対応するために、民主党は以下のような改革をすすめます。
民主党は、公的年金制度の抜本的な改革を提案しています。まず現在のバラバラな年金制度を改め、全ての国民が同じ年金制度に加入する一元化を行います。その際には、全ての人がその所得に応じて公平な負担をし、そしてその負担に応じて等しく給付を受ける「所得比例年金」と、高齢期等の最低限の生活を確保するための「最低保障年金」を組み合わせた制度とします。公的年金制度を一元化し、全国民が加入する所得比例年金を創設するにあたり、所得捕捉を公平に行い、かつ的確な年金給付を担保するために、税及び年金保険料徴収と年金給付に共通の納税者番号制度を導入します。あわせて国税庁と社会保険庁を統合し、歳入庁を創設します。
「最低保障年金」は税を財源としますが、その財源として「年金目的消費税」を創設し、年金制度を国民全体で広く、薄く負担することによって、安定的な年金財源を確保します。また年金目的消費税の税率を可能な限り抑制するために、公的年金課税の見直し、相続税等税収の年金財源への充当を検討します。 負債デフレ解消、個人消費活性化の観点から、住宅・耐久消費財、教育費等を中心にキャッシュローン以外の全てのローンに係わる利子を所得控除する制度を創設します。
高所得者に有利な「控除主義」を改め、必要な人に対し確実な支援が可能となる「給付主義」へと転換します。このため、扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除等の人的控除を見直し、これによって生まれる財源を子育て支援策などの社会保障給付の財源とします。また、国民の納税者としての意識を高め、政治及び行政への関心を高めることによって成熟した民主主義を実現するために、確定申告を原則とし、給与所得者については年末調整も選択できるという制度を導入します。 相続税・贈与税は富の偏在・固定化を回避するために累進構造を維持します。相続税については、配偶者への相続税率引き下げ、実際に被相続者の介護に携わった者に配慮した制度への改革、さらには公的年金の給付財源を念頭に「遺産税」への衣替えを含めて、検討します。また、市民自らが公益を担う社会の創造に向けたNPO等公益団体への遺贈に対する相続税の軽減措置や地域の良好な生活環境維持に資する里山・雑木林等の緑の相続に対する軽減措置を検討します。 税務行政の公正の確保と透明性の向上を図るために、納税者権利憲章を定め、納税者の権利を明確にします。 仕入税額控除についてインボイス制度を導入することにより、消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにします。また、滞納防止のため、一度滞納した事業者については毎月納税とするなどの措置を講じます。「年金目的消費税」の創設(⇒前記「年金制度改革と税制」の項参照)にあたり、消費税率を引き上げた場合には、世帯人員数に応じた基礎的消費支出にかかる消費税額を国民に還付するなどの方法で消費税の逆進性を是正していくことを検討します。単なる財政赤字補填のための消費税の安易な引き上げは経済や国民生活への打撃が大きく、慎重であるべきだと考えます。 「頭脳立国」を実現するため、いわゆるIT、ナノテクノロジー(超微細技術)等ハイテク分野に限定することなく、全産業を対象として、研究開発及び環境対策に対する減税を拡大するとともに、これを恒久措置とします。また減価償却制度を抜本的に見直し、時代に即した制度へと転換します。なお、その他の企業向け租税特別措置については、原則としていったん廃止します。2002年より停止されている「欠損金の繰戻し還付」の適用を復活させます。年金積立金にかかわる特別法人税自体の改廃も検討します。 個人資産の「貯蓄から投資へ」の移行を促進する上で、譲渡益を目的とする投資ではなく、長期的保有を前提とした配当目的の投資が望ましいという観点から、配当課税を軽減します。 市民の自立的な活動を支え、活力ある社会を形成するために、「NPO支援税制」を一層拡充するとともに、寄付金税制について大幅な拡充を行います。同時に、公益法人課税のあり方や公益寄付金優遇税制全般の見直しをすすめます。市民自体が公益を担う社会の創造に向け、NPOへの遺贈に対する相続税の軽減措置を検討します。 京都議定書の目標達成に向け、化石燃料の使用抑制・効率化と省エネルギー・新エネルギーの技術開発や環境関連投資促進に資する地球温暖化対策税を創設します。CO2排出量(炭素含有量)に着目し、炭素1トンあたり3,000円程度課税します。電力については、現在の電源開発促進税を一部組み替えて課税する炭素・エネルギー税とします。ただし、ほかに転換不可能な原料炭・ナフサ等の原材料としての使用については、課税の対象から外し、産業界等の温暖化ガス発生の抑止への効果的な取り組みに対しては税の軽減もしくは還付制度を設け、わが国産業競争力の維持・強化を図ります。また輸入石炭についても一定の措置を設けます。税収は、省エネルギー・新エネルギーの技術開発、設備投資、普及等に優先的に配分します。なお石油税制についても、そのあり方を含め今後検討します。 国土の骨幹となる道路の概成及び複雑かつ過重な自動車関連諸税の簡素化・適正化の観点に立ち道路整備を目的としてかさ上げされていた自動車重量税は、その税率を本則に戻し、自動車税との統合を図ります。また、消費税との二重課税となっている自動車取得税については、廃止します。 国が責任を果たすべき、国土の骨幹となる道路については整備が概成していることを踏まえ、道路整備に特定された巨額の財源を国が有する揮発油税、石油ガス税の道路特定財源制度は廃止し、その使途は暫定税率部分を含め一般財源化します。また地方の自主性を尊重する観点から、地方における道路特定財源制度(地方道路税、軽油引取税)も廃止し、一般財源化します。 2004年4月より導入された法人事業税の一部外形標準化については、地域経済・中小企業・雇用に重大な影響を及ぼしかねません。地方財政安定化の観点から法人事業税制の改革は必要ですが、その際には地方消費税との関係を整理しつつ検討します。 酒・たばこは、国民生活に密着したものであることから、税負担とその使途についての理念を確立し、さらに国民生活への影響を十分に勘案した上で税率を定めるべきです。その上で、酒税については酒類間の負担の公平性確保、たばこ税については国民の健康維持、たばこ農家への影響等に十分配慮し、適正な税率を設定します。発泡酒や「第三のビール」を狙い撃ちするような小手先の増税には反対です。