【3】経済・財政・金融
産業・通商
企業や人材が新しい時代の要請に応えられず、財政・年金など国民生活を支える制度インフラが破綻するなどわが国の経済・産業基盤が蝕まれる前に、一刻も早く抜本的な産業活性化策を実行に移し、産業再生を実現し、「閉塞NIPPON」からの脱却を図るべきです。これからは、弱い産業は強く、強い産業はさらに強くという生産性向上の両面戦略が必要です。民主党は、規制改革やナノテクノロジー(超微細技術)などの最先端産業育成を重視し、競争力ある日本をつくります。国民一人ひとりが意欲と能力に応じて職が得られるような環境をつくり、人々のやる気を高めます。グローバル経済に対応できる、自由で公正な開かれた通商国家を構築します。
事業規制原則撤廃をすすめ、企業努力と起業意欲を増進させます。民間の活力と創造力を引き出し、新たな需要を掘り起こすために、民間事業活動に関する規制の撤廃、公正競争の環境確保などをすすめます。現行の事業規制はすべてゼロベースで見直します。すべての官業を納税者・生活者の視点で徹底して効率化し、質の向上を図ります。そのため、市場化テストを進化させ、官民双方から競争によって優れたサービスを低廉に提供する主体を選ぶ「生活利便向上テスト」を実施し、事後チェックを強化します。「生活利便向上テスト」を実施するため所要の法整備を行うとともに、強力かつ中立的な第三者機関を設立し、そのもとで対象事業者の選定と落札者の決定を行うこととします。対象には特殊法人、独立行政法人の行う事業を含めるとともに、地方自治体に導入を促す仕組みとします。規制の全面見直し、アクションプラン策定、進捗状況の評価・監視などを行い、「規制改革推進基本法(仮称)」を制定し、規制改革を推進する上での法的根拠を明確にし、早急かつ着実に改革に取り組みます。
経済取引の基本法である独占禁止法を抜本改正し、(1)事案の性格に応じて、柔軟に減らしたり、増やしたりする『行政制裁金』を導入する、(2)審判官を増員し、法曹有資格者を過半数とする、(3)法令順守に着目した減免制度を導入する、(4)官製談合に関して、発注官庁職員の行為の申告者へ制裁金を減免する、等を柱とする法案を提出(2004年の第161国会)しましたが、その成立を図ります。あわせて、行政側に対する厳格対処規定を盛り込み、警察・検察との連携も含め公正取引委員会の機能を強化するとともに、橋梁談合事件に見られるような官製談合を防止する視点から、公務員の関与に関する罰則強化等を図り、官製談合防止法、刑法の改正を実現します。
弱い産業は強く、強い産業はさらに強くします。民主党は、わが国の優位性はモノづくり、特に加工技術にあると考えます。その優位性をさらに高めていくには、研究開発の水準を高めるとともに、その成果を知的財産権で十分に保護していくことが重要であり、そのために研究開発と知的財産保護強化を推進します。非製造業を中心とする国内需要依存型産業については、規制改革による生産性の向上を図ります。
人々のやる気を高め、産業の活性化につなげます。(1)働く意欲を高める所得税制、(2)何度でもチャレンジができる仕組みづくり、個人保証を行う企業経営者へのセーフティネット導入、(3)起業家が正当な社会的評価を受けることができる環境づくり、(4)大学研究者の意欲向上、国立大学法人等における研究者の自主性確保や大学における内部昇格制限による競争原理の強化、(5)企業におけるインセンティブ(動機づけ)システムの導入を容易にする、などの政策をすすめます。
女性の能力がフルに発揮されるための環境整備、例えば託児施設の整備、被扶養配偶者の勤労意欲を阻害する税制の是正などを推しすすめます。また、企業の新陳代謝を活発にするために、法人実効税率の引き下げや法人住民税の均等割り分増額などを検討します。また再就職業務の民間委託を促進すると同時に、再就職支援を1つの場所で受けることのできる、官民連携の「ワンストップサービス」を実現します。
知的創造力活性化のための包括的・総合的な政策を樹立します。民主党の主張によって成立した「知的財産基本法」の内容を以下のようにさらに具体化します。(1)各府省に散在する知的財産関連の行政機能を整理・統合し、知的財産庁の創設をめざします。(2)知的財産の保護を強化し、知的財産重視という国家政策を内外に明確化する観点から知的財産高等裁判所の充実をめざします。(3)営業秘密の保護を強化します。(4)審査官数の増員等の審査体制の強化を図り、特許審査を迅速化します。(5)特許の権利範囲の見直し等、特許取得を容易かつ促進します。(6)知的財産の評価を踏まえた中小・ベンチャー企業向けの新たな信用保証制度の創設をめざします。(7)知的財産に焦点を当てた研究開発費減税、設備投資減税、特許ロイヤルティー減税等の減税措置の導入をめざします。(8)知的財産の財産的価値評価等により、知的財産の流通を活性化するために会計基準をはじめ知的財産の価値評価手法の確立をめざします。(9)知的財産に係わる弁理士、弁護士、会計士等の専門家を拡充し、知的財産のワンストップサービスの実現をめざします。(10)新たな知的財産を生み出す人材育成のための教育環境及びプログラムの整備を行います。
民主党は、自由で多角的な貿易体制を強化し、WTO(世界貿易機関)の機能をさらに充実させる立場に立ちます。2001年11月のドーハ閣僚会議で開始が決定されたWTO新ラウンドについては、取りまとめに日本がリーダーシップを果たすようつとめます。中国に対しては、経済改革を推進し、国際ルールの遵守等を働きかけます。また、WTO協定に、労働基本権、環境条項などに関わる社会条項が盛り込まれるよう努力します。
世界経済、産業構造、雇用との関わりなど多くの面において重要な影響が及ぶことに鑑み、将来の国家像を見据え、(1)国際競争力強化の切り札と位置づける、(2)アジアに向け開かれた日本をつくる、(3)食の安全・安定供給、自給率向上を図る、(4)WTOの理念との整合性を求める、(5)EPA(経済連携協定)に発展させる、(6)一元的・一体的な交渉窓口をつくる―の6つの基本的な指針を明らかにしつつ、東アジア共同体の実現を含め、FTAを積極的に推進します。
貿易自由化に加えて、新ラウンドの交渉対象となったダンピング防止措置などの貿易ルールも含む幅広い分野についても議論を促進し、貿易制限的な措置や知的財産権侵害が恣意的に発動されないよう規律強化を求めていきます。また、急激な輸入自由化等により深刻な影響をこうむる場合には、WTO協定で認められる範囲内で、TGS(繊維セーフガード)をはじめとするセーフガードが十分に機能するよう、発動手続きの弾力化などにつとめます。