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岡田代表 外交・安全保障ビジョン「開かれた国益」をめざして ENGLISH

■本 文 > II. 平和で豊かなアジアを実現する
II. 平和で豊かなアジアを実現する

日本はアジアの一員であり、平和で豊かなアジアをつくることは日本の最も重要な「開かれた国益」である。経済成長を遂げ、将来性に富むアジアの一員であることは、日本にとって大きな幸運であり、その機会を活かし、平和で豊かなアジア実現のために積極的な役割を果たすことは、日本の安全と豊かさの実現に直結するものである。日本はアジアの中において最も成熟した民主主義国家であり、高い技術力と資本力を持つ企業と豊かな市場を提供できる国である。また、日米の協力関係を通じて米国をアジアにより深く関与させ、日米同盟を地域の公共財として機能させると同時に、アジアの多様な声を米国の政策に反映させる「アジアと米国の連結器」の役割を果たすことができる。アジアを将来、世界で最も平和で豊かな地域とするためには、国づくりや人づくり、経済連携や平和維持活動など様々な面で日本が持てる力を十二分に発揮することが求められている。そのためにも、近隣諸国、とりわけ中国、韓国との間に信頼関係を築き上げることが必要不可欠である。

アジアは今、世界で最も経済的にダイナミックな地域である。アジアの持続的な経済成長と平和が日本にもたらすプラスは計り知れない。アジアは、グローバル化と地域的な経済発展の進行に伴い、今では経済的に一つのまとまりを持った地域となりつつあり、日中韓3カ国とASEAN諸国が相互に依存関係を強めながら発展している。アジアは人種・宗教・文化・経済的発展段階、多くの面できわめて多様であり、朝鮮半島、台湾海峡、インド・パキスタン情勢、インドネシア・フィリピンなどにおけるテロ組織の活動など、安全保障分野においてもいくつかの大きな懸案事項が存在する。しかし、こうした問題を適切に管理・解決していけば、多様性を逆に強みとして、経済成長による豊かさの実現と相互依存関係の進展、そして民主主義の成熟によって、アジアに今以上の一層の平和と安定を実現できることは確実である。東アジア共同体の規範を徐々に形成し、加盟国がそれに従うことによってこの地域に平和と繁栄をもたらすことも非常に重要となる。

平和で豊かなアジアを実現する上で最も注目すべきは、台頭する中国である。中国は、将来どのような道を進むかによって、アジアの平和と豊かさを促進する機会にも、混乱と停滞を招くリスクにもなりうる。中国が環境・エネルギーなどの問題を解決しつつ持続可能な経済成長を継続させ、社会危機を克服し、政治的に安定し、そして大国としてアジアの平和と繁栄に貢献し、責任を持つ存在となることは、日本にとっても大きな利益である。

日本、中国、韓国、ASEANと並び、21世紀アジアの経済発展の核となることが期待されるインドは、経済大国、人口大国、文化・思想大国としてのみならず、民主主義国家として独自の魅力を放っている。戦略面も含めた緊密な関係をインドとの間に築きあげることは、それ自体がわが国の利益となり、また、日本の外交的選択肢を増やすことにもつながる。

今日のアジアでは、東アジア共同体の構築を目標とすることについて域内各国が合意するなど、新しい秩序の形成がダイナミックに進められつつある。日本が主導して地域秩序をデザインし、わが国とアジア全体の平和と繁栄を実現することこそが、新しい政府の仕事である。その際、アジアにおける外交のルールが、「ゼロ・サム(他人の得[損]は自分の損[得])」ではなく、「プラス・サム(他人の得[損]は自分の得[損])」にあることを基本認識として持たなければならない。また、アジアは言語、宗教、文化などにおいてきわめて多様であり、民主主義の成熟度、経済発展の水準などにも大きな格差がある。そうした多様性を十分に認識し、日本の戦争の過去と謙虚かつ率直に向き合い、アジアの人々の信頼を得て、アジアの安定と繁栄の実現のために貢献する、これが私たちの日本外交の基本姿勢である。

1. 東アジア共同体の実現
  東アジアにおいては域内貿易の割合が50%を越え、既にNAFTA(北米自由貿易協定)以上に経済的相互依存が進んでいる。また、日本は人口減少社会となることが予想され、一国だけの経済的繁栄は今以上にありえない。わが国がASEAN、韓国、中国、インドなどとFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)を締結することは当然であり、また不可欠でもある。現在、日本の東アジア諸国とのFTA、EPA実現のための交渉がスピード感に決定的に欠けるのは、いまの政権がその重要性について十分な認識を欠いているためである。日本は自由貿易によって大きな利益を得ており、私たちが今、高い生活水準を享受できているのもそのためである。そうした自由貿易の重要性を忘れ、個別利益調整の中で大局を見失い、内向きとなってはならない。新しい政府は強い政治的意思を持ってFTA、EPA締結を実現する。

経済が一体化すれば、エネルギー、環境問題、金融など、地域的課題について迅速な対応が求められるようになる。東アジア共同体は、貿易・投資などの経済問題はもちろん、保健・衛生、人口、教育・訓練などの社会的な諸課題まで、広範なテーマに取り組む。地域的な対応体制構築の上で重要なことは、政策対話の土台となる基礎的データの収集・分析であり、そうしたデータを収集し、共通の地域的課題を話し合うための常設組織として、東アジア共同体事務局を創設する。アジア開発銀行(ADB)の機能も強化する。

経済のグローバル化の進展に伴う生活水準の向上は、民主主義の深まりや法の支配の貫徹、人権保護といった課題をどの国にも突き付ける。こうした政治的な課題についても、東アジア共同体は共通テーマとして取り組んでいく。また、東アジア共同体は、構成国の住民を代表する議会人が交流することによって、その基礎をさらに固めることができる。『東アジア議会人会議(仮称)』を作り、議員交流を促進し、政策対話を深める。

東アジア共同体は、決して排他的なものであってはならない。インドおよびオーストラリア、ニュージーランドは東アジア共同体に向けての重要なパートナーである。ただし、最初から範囲を拡大しすぎることは、それだけ意見調整に時間を要し、結果としてAPEC(アジア太平洋経済協力会議)と同様に機動性に欠けるものとなりかねない。東アジア共同体構築に向けての第一歩である東アジア首脳会議は当面、ASEAN諸国と日中韓3カ国の計13カ国を中核に発足することが自然であろう。将来的には、東アジア共同体が米国も含めた姿に拡大・発展することも展望すべきである。当面、日本は米国との間でFTAを締結し、米国と東アジア共同体の連結器の役割を果たすことが現実的と考える。

東アジアの統合を促進し、日本を活性化するため、日中韓による投資保障協定の先行締結、アジア諸国からの留学生や外国人技能労働者の雇用促進などと並んで、出入国管理の徹底などルールを整備したうえで、期限を切った未熟練労働者の本格的な受け入れ態勢を整備するなど、日本社会の開放に向けた広範な取り組みを行う。

また、ODA(政府開発援助)についても、フィリピン、インドネシア、ベトナム、カンボジアなどへの援助強化など、総花的援助から戦略的援助へと援助政策を転換し、東アジア共同体の人的、物的インフラ作りに資するものを増やす。

以上の取り組みの前提として、新しい政府がまず実行すべきは、近隣諸国との信頼醸成である。戦後60年を経て、未だに中国、韓国と本当の信頼関係を築くことができないでいることは、日本外交の大きな負債となっている。最近の中国や韓国における反日デモの拡大は、戦後、先人たちの努力によって少しずつ築き上げてきた信頼関係が一挙に無に帰しかねない危機的状況にあることを想起させた。こうした反日行動の原因を相互に相手のみに求め、非難の応酬を繰り返すことは何ももたらさない。信頼関係を築かなければいずれの国にとっても大きなマイナスであるという認識のもと、相互理解と相互尊重の実現のため、お互いに真摯な努力を払うべきである。

その際、痛みを与えた方は忘れやすく、痛みを与えられた方は容易に忘れることはできないということを私たちは忘れてはならない。過去の一時期における日本の侵略と植民地支配が近隣諸国の人々に多大の損害と苦痛をもたらしたことは、1995年8月15日の内閣総理大臣談話にもあるように否定できない事実であり、そのことを謙虚かつ率直に反省したうえで、強い決意を持って未来志向の関係を構築しなければならない。私たちは、このことを新しい政府の共通認識とするとともに、外交の重要な柱と位置づける。これまでに戦争で犠牲となった方々や、今後、国際公務に携わる中で不幸にして命を落とした方々を追悼するための国立施設の建立、歴史認識の共有化に向けての近隣諸国との共同作業の強化などを着実に具体化していく。

2. 安全保障を含めた地域的協力への発展
  東アジア共同体は経済統合、政治協力からスタートするが、その究極の目標は、加盟国同士が相互に相手を敵視しない、信頼感と安心感を作り出すことにある。ただし、東アジアの安全保障協力には、この地域の安全保障に重要な役割を果たす米国の関与が不可欠であり、またこの地域には政治体制の違い、民主主義の成熟度の違いなどもあることを考えると、将来の地域安全保障体制確立を展望しつつ、できることからやっていくという現実的なアプローチが必要である。

したがって、安全保障協力においては、まずASEAN+3(日中韓)を中核とし、ARF(ASEAN地域フォーラム)、6カ国協議など、利用可能な舞台を総動員して漸進的かつ着実に協力を進めていく。北朝鮮に関する6カ国協議の枠組みは、現在の交渉が成果を挙げ、朝鮮半島に核のない平和が実現できた場合には、地域の安定のための恒常的な枠組みへと発展させることができる。

さらに、当面、日本にできることとして、PKO要員、文民警察官等の共同訓練・演習をアジアの国々と実施し、東アジアPKO訓練センターを沖縄に誘致する。またテロ・海賊対策の一環として、沿海国の主権を尊重しつつ、日本、ASEAN、中国、米国、インドなどによるシーレーン共同パトロール構想を推進する。

アジアの安全保障において、大量破壊兵器(WMD)、テロへの対応は極めて重要な課題である。私たちは、拡散安全保障構想(PSI)を推進するとともに、インド・パキスタンの核保有の一因となったカシミール問題の解決に積極的に取り組む。フィリピン、インドネシア、ミャンマーなどを始めとしたアジア諸国のガバナンス強化も支援する。

3. 中国との対話の制度化
  日中間では経済的相互依存関係が大いに深まり、これが今後もさらに進展することは確実である。一方、政治的には、日中首脳の相互訪問が3年以上も途絶えていることに見るように冷え切った状態が続いている。国民レベルでの相互理解も深まっていないばかりか、1972年の日中国交正常化以来最大の危機的状況にある。平和で豊かなアジアを実現するために、そして日本自身の安全と豊かさのためにも、私たちは、中国との建設的な関係を築いていくことの重要性の認識を深め、強い決意を持って日中関係の再構築に取り組まなければならない。同時に、米国と中国の平和的共存、中国の国際社会への積極的な関与を確保し続けることが東アジアの安定と繁栄のカギとなることを忘れてはならない。ここ数年、日中の政治的関係が冷却・悪化し、日本の国益が損なわれていることの大きな原因は、今の政権がこのような日中関係に関する将来展望と大局観を欠いているためである。日中関係の再構築は日本外交にとって最大の課題であり、新しい政府の最も重要な仕事の一つである。

私たちはそのために、まず両国の首脳間の信頼関係を築きあげた上で、経済、金融、通貨、エネルギー、環境、海洋、さらには安全保障の分野における日中間の政策対話を深化させ、制度化していく。東アジア共同体の深化や第三国に対するODAの効果的な実施のための日中協力を行う。安全保障対話は特に重要であり、日中首脳会談の定期的な開催に加えて、両国の外務・安全保障担当閣僚レベルによる日中2+2を設置する。このようなトップレベルの継続的な会合を通じて日中の政策方針や意図に関する透明性を高めることは、アジアおよび世界に安心感を与える効果を生む。対話を行動につなげ、理解を信頼に育てて、将来は軍縮のための協議を実現する。

東アジアの安定にとって台湾をめぐる緊張の高まりは非常に危険なことであり、そうした事態は日本、中国、米国、台湾いずれの国・地域にとっても利益とならない。私たちは、1972年の日中共同声明を前提としつつ、台湾による一方的独立と中国による武力行使の双方に反対する。

東シナ海における排他的経済水域(EEZ)の日中間の境界画定と天然資源の開発問題は、日中の指導者同士の信頼関係を深めつつ、協議を通して解決する。世界の大エネルギー消費国である日本と中国が、提携することにより大きな利益を得るのは誰の目にも明らかである。国際法理や科学的根拠に基づく日本の意見を踏まえ、天然ガス・石油の共同開発を実現し、東シナ海を平和の海とする。さらには、日中韓やロシアを含む東アジア・北太平洋地域におけるエネルギー協力を推進する。

4. 朝鮮半島の安定化
  日韓関係においては、1998年の金大中大統領の訪日を機に政治的和解が進展したこと、経済的相互依存の深化、広く国民レベルにおけるスポーツ、映像文化ほかの文化交流の拡大と深化によって、未来志向の建設的な関係が徐々に芽生え始めていた。それだけに、最近の韓国における反日感情の高まりは残念でならない。私たちは、近年の日本政府のアジア軽視路線を見直し、金大中大統領訪日時の原点に立ち返るべきである。芽生え始めた未来志向の建設的な日韓関係をさらに強固なものとして、これを東アジア共同体の中核とするためには、私たちは過去の問題を直視し、真摯な態度で前向きな対応を進めなければならならない。私たちは、こうした傾向を促進するため、また、新しい政府は、両国の指導者間に強い信頼関係を築くとともに、特に若い世代の議員交流を促進する。速やかに日韓FTAを締結し、経済交流および文化交流をさらに進める。政府・議員間の交流のみならず草の根交流を進め、日韓関係をボトムアップすることも重要である。

日本と東アジア地域の平和と安全を実現するためには、北東アジアを非核地帯とすることが不可欠である。そのためにも、6カ国協議を成功させ、北朝鮮に核開発を断念させるとともに、朝鮮半島と日本を含んだ北東アジアの非核地帯化を推進し、中国を含めた東アジア諸国全体の軍縮・軍備管理につなげていかなければならない。

拉致は、国家主権および人道上の問題として決して許すことのできない問題である。私たちは、米・韓、さらには中国とも連携を強化しつつ、毅然とした外交を展開し、拉致問題の早期、全面的な解決に精力的に取り組む。

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