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岡田代表 外交・安全保障ビジョン「開かれた国益」をめざして ENGLISH

■本 文 > III. 米国との関係を進化させる
III. 米国との関係を進化させる

日本と米国は同盟関係にある。ここでいう日米同盟とは、日米安保体制を基盤に、日米両国がその基本的価値観と利益を共有する国として、安全保障面をはじめ、政治および経済の分野で緊密に協調・協力していく関係のことである。日米同盟はアジア太平洋地域の安定の要であり、わが国の平和と繁栄を実現する上でこれまで極めて重要な役割を果たしてきた。米国は、ソ連崩壊によって軍事的に世界で抜きん出た存在となり、その地位が揺らぐことは当分ありそうもない。日米同盟は日本にとって大きな資産であり、米国が日本にとって不可欠の協力相手であり続けることは10年後も変わらない。このような基本認識を前提としつつ、他方で日米関係を取り巻く安全保障環境は大きく変わりつつあり、私たちはそうした変化をしっかりと踏まえた上で、2015年の日米関係の進化を構想しなければならない。

具体的な変化としてまず挙げられるべきことは、冷戦の終了によって東西対立というわかりやすい対立構造が崩壊し、より複雑で利害の錯綜する世界となったことである。そうした世界にあって、日米両国は確かに自由と民主主義という価値を共有する。しかし、そうした価値の実現方法、さらには両国の利害については、必ずしも一致しないことがあるということを認識しなければならない。もう一つの変化は、米国内に対テロ戦争を前面に掲げ、場合によっては単独行動、先制攻撃も辞さないとの動きが見られることである。こうした環境変化の下で、米国の要請が日本と極東の安全確保からより広範なものへと変わりつつある中で、日本政府は場当たり的・受動的な対応を繰り返している。深く考えることなく「世界の中の日米同盟」を強調し、米国の戦略への追随色を強める結果となっている。そのことが、日本の国益を損ねることがあるとともに、長期的には日米関係の弱体化にもつながるのではないかとの疑念が生じている。今重要なことは、日米関係が重大な試練に直面している、との切実な認識を持つことである。日米の協力関係をこれから持続的、安定的に発展させて行くためには、安全保障面においては2つの意味で進化を必要としている。

第一に、新しい政府は、安全保障面での日米の共同行動に関し、その基本方針を明確にする。具体的には、日本は国際的な安全保障環境の変化に応じて、アジア太平洋地域においては米国との同盟関係を深めていく一方、中東・アフリカなど、それを越えたグローバルな問題について自衛隊派遣を行うときには国際連合の枠組みの下で行うという原則を、日米の共通認識とする。現在、私たちは、アジア太平洋地域における戦略バランスの変化、北朝鮮の核脅威の高まり、テロリズムをはじめとした新しい脅威の顕在化、軍事革命(RMA)の進展、米軍のトランスフォーメーション(軍事再編)といった新しい事態に直面している。このように国際環境の不透明さが増しつつある中で、アジア太平洋地域において日米同盟を「安定力」として十分に機能させる必要がある。ただし、武力による解決に対しては抑制的であるべきとの日本の基本姿勢を日米同盟においても堅持していく。

他方で、先述のように、グローバルな安全保障問題で米国にただ追随する路線を推進することは、日本の「開かれた国益」を損なう危険がある。グローバルな問題により積極的に関与する日本となるとともに、自衛隊派遣を行う場合には、あくまでも国連安全保障理事会における決議に基づくことを原則とする。

第二に、新しい政府は、日米同盟関係を両国の自立を前提とした、よりバランスの取れたものにする。戦後60年、日本の安全保障政策は米国依存の中で、一種の思考停止に陥ってきた。しかし、自国の安全を一方的に他国に依存することは政治の責任放棄にほかならない。日本国民の希望や他のアジア諸国の見方を米国に伝え、必要な場合は米国に自制を促すことも、日米同盟関係を進化させ、それをアジアと世界の公共財とするために必要である。また、米国の良き友人として、国連を始めとする国際的かつ多角的な協議の枠組みの中での行動こそが世界の平和実現のための道であることを、米国に対して伝えていく。両国の自立を前提とした日米同盟関係を築くためには、日本自身が自らの国を守る責任をより十全に果たす一方、日米安全保障条約に関係する諸制度の見直していくことが必要である。

1. 防衛力の再構築
  日本の安全保障政策構築にあたっては、日本国民の安全を守ることは日本政府の最も重要な責任である。このことを基本認識とすべきである。例えば、日本はテロや領域警備などについては、日本が独力で対応できるだけの能力を整備しなければならない。私たちはそれに要する装備・法制上の改革を行う。

日本の防衛体制についてはまた、新たな脅威に対する対応能力の強化と、冷戦時代の遺物ともいうべき装備・人員配置ほかの徹底的な見直しが不可欠である。私たちは、技術的実現可能性の検証、日本独自の判断尊重を前提としつつ、ミサイル防衛を推進する。その際、軍拡競争を招く結果とならないよう、十分に配慮する。

また、いかなる国であっても、自前の情報なくしては、有効な防衛も主体的な判断も不可能である。日本独自の情報能力を強化していく。

2. 戦略対話能力の強化
  これまで日米戦略対話においては、米国が主導し、日本が後追い的に対応してきた。これからの日米戦略対話においては、政治の役割を拡大し、日本の安全保障観に基づき、日本からの提案をもっと増やすことが必要である。

アジア太平洋地域における予防外交、予防安全保障、国づくり、平和構築などについては、米国と相互補完的な役割を果たせる分野を中心として、対米提案能力を強化する。その前提として、警察・行政官・企業・NGOなどによる国づくり・平和構築支援活動を充実させる。

日本はアジアにおける米国の友人、同盟国として、アジアの多様な価値観を米国に伝え、米国の対アジア外交に反映させる努力を継続的に行っていく。

3. 日本防衛とアジア太平洋地域の安定に関する日米協力の強化
  アジア太平洋地域の平和と安定はわが国にとって死活的に重要であり、私たちは、日本有事および日本の安全に直接関係のある事態に際しては、日本の主体性を当然の前提としながら、米国との防衛協力を推進する。

私たちはまた、新たな脅威への対応において、日米間および多国間で実効的な協力体制を構築する。そのためにより具体的には、拡散安全保障構想(PSI)への参加や、法を適切に執行する能力、情報収集・分析活動、財政・輸出管理などにおいてテロ対策の強化に取り組む。さらにまた、個人や集団の不安感を軽減する「人間の安全保障」の推進を通じて、人々の不満を吸収する形でテロ集団が社会に根を伸ばすのを抑える。テロ集団の潜伏を防ぐためにもアジア諸国の適切に法を執行する能力向上でも積極的な支援を行う。

4. 在日米軍基地の整理・縮小と日米地位協定の改定
  日本の自主性を確保し、日米関係を国民に支持され、持続可能なものとするため、犯罪人取調べ、環境保全等の条項について、地位協定の改定交渉に着手する。

在日米軍基地、とりわけ敗戦の遺物ともいうべき在沖縄米軍基地の現状は持続不可能であり、米軍のトランスフォーメーションの流れも活用しつつ、その整理・縮小を進める。また、日米安保条約に基づく事前協議制度のあり方を明確にし、活性化させる。

5. 日米関係のさらなる発展
  日米関係の重要性は安全保障分野にとどまらない。米国は政治面・経済面・社会面でも日本の最も大切なパートナーであり続ける。戦後60年間の良好な日米関係は、両国関係者の努力によってなしとげられた成功物語である。日米関係を更に発展させるためには、米国には世界のリーダーとしての成熟と謙虚さを期待するとともに、日本には自らの役割と責任をそれぞれ果たしていく自覚と責任が求められる。

経済面では、日米FTAを目標に据えながら、貿易・投資・人的交流をさらに促進する。また、通商摩擦などが政治問題として顕在化する前に解決を図ることも大変重要である。この面での官邸の調整機能を一段と強化する。経済の分野においても、日米両国はお互いになくてはならない存在であることを十分に認識しながら、更に関係を深めていく。

文化面では、10年後を展望しつつ、米国と本腰を入れた交流を進めることが必要不可欠である。米国を含む海外の大学の誘致、高水準の米国研究を行うシンクタンクの設立や、米国の大学・研究機関・財団との提携を通じて、日米関係を発展させる新たな担い手をつくっていく。同時に、これまでに蓄積された対米人脈は日本にとって貴重な財産であり、これを有効活用するように、政府が積極的に努力しなければならない。近年存在感が希薄になりつつある議員交流も、政党、国会、地方議会などあらゆるチャンネルを通じて深める。

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