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重点政策50

くらし (社会保障・はたらき方・教育・子育て)

年金を抜本改革 ――消えた年金も救済

危機的状況にある国民皆年金制度を立て直し、将来にわたって堅持するため、以下の原則に基づいた年金制度の抜本的な改革を断行します。

  1. 全ての年金を例外なく一元化する。
  2. 基礎(最低保障)部分の財源はすべて税とし、高額所得者に対する給付の一部ないし全部を制限する。
  3. 所得比例部分の負担と給付は、現行水準を維持する。
  4. 消費税は全額年金財源(基礎部分)に充当する。

また、年金受給者については、税・保険料合計の負担水準が過重なものとならぬよう、公的年金控除の見直し等を行います。年金保険料を年金給付以外に使う制度は廃止します。

また、国民の財産である年金保険料をムダづかいしてきた社会保険庁は廃止・解体し、業務を国税庁に統合した歳入庁を設置します。国税庁のもつ所得情報やノウハウを活用して未納をなくすとともに、類似の業務を整理して徴収コストを削減します。また税や保険料の納付や相談が一ヶ所で行えるため、利便性が向上します。

「消えた年金」問題については、社会保険庁解体までに、社会保険庁・自治体がマイクロフィルム・紙台帳で保有する昔のデータを、現在使っているコンピュータのデータと照合して給付の基となるデータを正しくする、約1億人の年金加入者全員に保険料納付記録を送付して本人による納付履歴の確認を求めるなど保険料の納付記録の消失や支給漏れを徹底的に調査します。これによって「納めた保険料に見合った年金給付を受ける」という当然の権利を回復すると共に、過去分の給付不足については、時効を適用せずに全額支給します。

小児科・産科医をはじめ医療従事者不足の解消

日本の医師数は人口10万人あたり200名です。OECD加盟国平均の290名とするためには、日本全体で10万人足りません。特に小児科・産科医不足は深刻です。20代の医師は毎年男性が100人減り、女性は350人増えていますが、小児科・産科の女性医師の半数が妊娠・出産・育児を機に病院勤務をやめざるを得ない状況におかれています。看護師は1病床あたり欧米の3分の1から5分の1の人数しかいません。しかも過酷な労働条件のため、新規就職者の1割近くが1年でやめてしまいます。女性医師や看護師が働き続けられる支援策が最優先です。院内保育所の整備や復職のための研修の支援等を進め、女性医師や看護師が仕事を続けやすく、復職しやすくします。小児科では開業医が地域小児科センターで時間外外来を担当するといった協働作業による集約化をさらにすすめます。産科医は勤務が過酷なだけでなく、訴訟リスクなども高いことから、無過失補償制度と医療事故原因究明のための医療安全委員会を設立します。特定機能病院では先進・先駆的な医療開発とともに、専門医教育・研究者養成を行います。地域がん診療拠点病院では国立がんセンターと協力しつつ、化学療法専門医・放射線治療専門医を養成します。臨床研修病院ではより専門的な能力を高めるための研修を担い、優秀な臨床医を育成します。医療費抑制と称し10%削減された医学部定員を元に戻し、地域枠、学士枠、編入枠とします。各診療科の必要医師数を明示し、医療圏毎の数値目標を提示します。良質なチーム医療の実現のため、各学会等の認定資格制度等を活用しつつ、看護師や薬剤師などの専門教育を支援します。

がん対策の拡充

民主党が主導し、06年通常国会で「がん対策基本法」が成立しました。今後はこの法律に基づき、がん患者や家族も加わった「がん対策推進協議会」で「がん対策推進基本計画」が策定されますが、この計画の策定を通じて、「どこにいても最善のがん治療が受けられる体制」「がん患者への最新のがん関連情報の提供や相談支援体制」を実現します。

医療事故の原因究明及び再発防止

医療事故に直面した患者側および医療側が同様に求める、「真相の究明」、「医療側の誠実な対応」、「事故の再発防止」を実現するために、民主党は以下の3点を提案し、有機的に機能するよう立法措置を講じます。

  1. 医療事故発生早期に、患者に十分な知識・情報を提供し、医療側との対話をサポートし、更に家族に適切な心理的ケアを提供する役割を担う「医療メディエーター」養成し、一定規模以上の医療機関に配置する。
  2. 訴訟以外に、医療事故被害者のニーズに応じた「裁判外紛争処理機関」を設置する。相談機能、合意型紛争解決手続、仲裁型紛争解決手続を複合的に備え、全国の主要箇所に配置されるよう実効性のある制度を設立する。
  3. 国の機関として「医療安全委員会」を設置し、医療機関の管理下における事故の申立を受け、独自の調査と医学的検査(解剖・各種検査とその保全を含む)により事故原因の究明を行い、再発防止策の提案を行う。

介護サービス基盤の拡充

介護保険制度は国民の共同連帯の理念によって成り立つものです。親族など特定の介護者に負担を強いるのではなく、介護を必要とする人に良質なサービスを提供できる体制を維持することが必要です。2005年の介護保険法改定後に、特に介護予防において、従来受けることのできたサービスが受けられないという問題が起きています。ホームヘルプサービスや福祉用具の給付中止だけでなく、介護報酬が引き下げられ、事業者の運営に影響が生じた結果、介護従事者の労働条件も悪化しています。また療養病床の再編により、胃ろうや吸痰行為など、医療ニーズの高い患者が早期退院を迫られる事態が生じています。民主党は介護報酬を適切に見直し、療養病床から無理やり退院を迫られることがないよう、退院の受け皿となる介護施設の整備を早急に実施します。

民主党はより良い介護保険制度にするため、財政が厳しい状況でも、必要なサービスは引き続き受けられるよう、介護基盤整備を最優先します。特に在宅介護推進のため、ホームヘルパーやケアマネージャーの増員や専門性を高める施策を講じ、労働条件を向上させ、介護が必要な人が安心してサービスを受けられるようにします。グループホームの増設なども行います。

障がい者自立支援制度などの抜本改革

「障害者自立支援法」の施行(2006年4月)に伴い、サービス利用時の定率1割負担や食住費の自己負担が導入されたことから、障がい者の中には急激な負担増に耐えられず、サービス利用を中止したり、抑制するケースが出ています。施設を退所し、一切のサービスも利用せず、自宅で過ごすような状況では、障がい者の自立した生活と呼ぶにはほど遠く、現行法は「障害者自立阻害法」と言わざるをえません。

民主党は現行法に基づく介護給付・訓練等給付に対する定率1割負担を凍結し、支援費制度と同様、応能負担に戻して、障がい児・者福祉サービスを維持します。そのため、民主党は今年1月、「緊急避難のための障害者自立支援法等の改正案」を提出、3月に提出した「緊急格差是正措置法案」の中にも同様の内容を盛り込みました。

精神障がい者政策について、民主党は保健医療と福祉全体のレベルアップをめざして、「病院から地域へ」という流れを確実なものにします。とりわけ72,000人の社会的入院患者の社会復帰に向けて、関連サービスの整備を含め、諸施策の拡充に取り組みます。

現行の障がい者政策・法制度は、身体・知的・精神と障がい種別ごとに分かれ、ここに該当しない障がいや難病等に対応できていないという問題があります。民主党はこれを抜本的に見直し、包括的な「障がい者福祉法」を制定するとともに、障がい者福祉予算を拡充します。

被爆者の援護

被爆者援護のため、民主党は現行の厚生労働省による「原爆症認定に関する審査の方針」を直ちに廃止したうえで、被爆実態に応じた新しい「認定基準」による制度を創設します。「被爆者はどこにいても被爆者である」との認識のもと、民主党は在外被爆者への被爆者援護法の完全適用を求め、これまで同法改正案を提出してきており、その成立をめざします。また、被爆二世が高齢化するにつれて、被爆による健康への影響が懸念されており、その実態把握に努めるとともに、実態に応じた対策を検討します。被爆者に対する、保健、医療及び福祉にわたる総合的な施策を実施します。

格差是正の観点からの税改正 *所得税の正常化(再分配機能の復権)

格差是正のために、所得控除を整理し、給付・税額控除を組み合わせた制度の導入を図ります。消費税の逆進性対策についても、「戻し税」という形であわせて行います。なお、扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除については、見直しによって生まれる財源を子育て支援策などの社会保障財源とします。また、資産性所得に対する課税水準の適正化を図りつつ、株式の長期保有に対する一定の配慮によって「貯蓄から投資へ」の流れを促進し、健全な市場の発展に努めます。

均等待遇とワークライフバランスで「はたらき方」を改革

パート労働者はいまや1,200万人を超え、基幹的・恒常的な労働力としての役割を担っています。しかし、その処遇については、労働時間や仕事の内容が正社員とほとんど同じであっても、雇用形態の違いを理由に、その働きに見合ったものになっていないと指摘されてきました。民主党は短時間労働者や有期労働者であることを理由に、賃金その他の労働条件について、通常の労働者と差別的取扱いをしてはならないことなどを盛り込んだ、「パート労働者の均等待遇推進法案」や「労働契約法案」を提案しています。今後も「はたらき方」によって賃金その他の労働条件が著しく不利にならない合理的な原則づくりに取り組みます。

また、労働時間と労働者の健康は密接に結びついており、長時間労働によるメンタルヘルスの悪化、過労死・過労自殺などを防ぐため、健康・安全配慮義務、健康確保のための労働時間管理を徹底することが重要です。民主党は、時間外勤務手当の割増率を現行の25%から50%に引き上げます。

民主党は男性・女性を問わず、すべての労働者が、仕事と家庭生活の両立、健康確保、地域活動、自己啓発など、一人ひとりの意識やニーズに応じて、ワークライフバランスを保つことのできる社会、すなわち、男女ともに仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会をめざします。「仕事と家庭の両立支援法」(2004年159通常国会に提出)、「男女雇用平等法」(2006年164通常国会に提出)の制定に向けて取り組みます。

さらに、「再就職奨学金」の創設により、育児や介護のために退職した人の再就職を支援します。政府調達事業の女性企業家への一定比率の発注枠確保やNPO等による起業を推奨し、女性企業家を増やすことなどを通じ、多様なはたらき方を実現し、日本の新たな活力を生み出します。

最低賃金の大幅引き上げ

現行の最低賃金は年に1円から5円しか上がっておらず、地域によってはフルに働いても生活保護水準を下回るなど、ワーキングプアを生み出す要因の一つとなっています。民主党は、まじめに働いた人が生計を立てられるよう、最低賃金の大幅引上げを目指し、最賃法改正案を国会に提出しました。(1)最低賃金の原則を「労働者とその家族を支える生計費」とし、(2)すべての労働者に適用される「全国最低賃金」を設定(800円を想定)、(3)全国最低賃金を超える額で各地域の「地域最低賃金」を設定、(4)中小企業における円滑な実施を図るための財政上・金融上の措置を実施する――ことなどで、3年程度かけて段階的に地域最低賃金を引き上げ、全国平均を1000円にすることを目指します。

若者の雇用就労支援

バブル崩壊後の不景気に伴い、若い世代が学校を出ても、就職先がない、正社員の職に就けない、厳しい雇用状況が続きました。そうした「就職氷河期」に社会に出た40歳未満の方にとって、景気が回復しつつある現在も正規雇用への転換は狭き門で、職業能力開発の機会も乏しく、正規雇用者との格差が広がっています。民主党は国会に「若年者職業安定特別措置法案」を提出しました。自立を希望する若者が安定した職業に就けるよう集中的に支援するため、(1)「若年者等職業カウンセラー」による職安での就労支援、(2)「個別就業支援計画」を作成し、職業指導、(3)民間企業等での職業訓練等を用意し、必要に応じて就労支援手当(一日1,000円、月30,000円相当)支給――を行います。職安には若者が集まることのできる場所を提供し、ピアカウンセリング等も行います。また、全国の中学2年生を対象に、5日以上の職業体験学習を実地します。

*ピアカウンセリング=「ピア」とは「同等の者、仲間」の意味。同様の悩みを抱えたり、悩んだ体験がある仲間同士によるカウンセリングのこと。

月額2万6000円の「子ども手当」、出生時にさらに助成金

子育て支援をすすめる一環として、扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除を見直し、行財政改革の断行により、子ども手当(児童手当)を充実します。子どもが育つための基礎的な費用(被服費、教育費など)を保障すべきとの観点から、中学校卒業までの子ども一人あたり、月額2万6000円を支給します(所要額約6兆円)。

また、出産時には、保険給付による現行の出産一時金(約35万円)に加え、国庫を財源として、出生児一人あたり20万円の助成金を給付し、ほぼ自己負担なしに出産できるようにします。

学校教育力の向上

地方公共団体が設置する学校は、保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参画する「学校理事会」が主な権限を持って運営します。現場に近い地域と保護者が協力して学校運営をすすめることによって、学校との信頼関係・絆を深め、いじめや不登校問題などへの迅速な対応や、学校との有機的連携・協力を可能とし、同時に地域コミュニティの再生、強化につなげます。

また、教員の質と数の充実のために以下の措置を行います。

  1. 教員が、その崇高な使命を果たし、職責を全うできるように、人員を確保し、養成と研修の充実を図ります。 教員の養成課程は6年制(修士)とします。
  2. 教員の資格、身分の尊重、適正な待遇の保障については国が責任を持ちます。
  3. 教育行政の体系を簡素にし、現場の主体性を尊重することにより、教員を煩瑣な事務から解放し、教育に集中できる環境をつくります。

高校・高等教育の無償化

高等学校は、希望者全入とし、無償化します。

すべての人が、生まれた環境に関わりなく、意欲と能力に応じて高等教育を受けられるように、国際人権規約に基づく高等教育無償化の漸進的導入及び奨学金制度など関連諸制度の抜本的拡充を実施します。

希望者全員が生活費も含めて借りられる奨学金制度の創設

大学、大学院等の学生を対象として、希望者全員が、最低限の生活費を含めて貸与を受けられる奨学金制度(借り入れ限度額を年間300万円と想定)を創設します。このことにより、親の仕送りゼロでも、誰もが大学等で学ぶことができ、さらにいったん社会人となった人でも意欲があれば大学等へ行きなおすことができます。また、子どもの教育費負担を抱える40歳代から50歳台の保護者の可処分所得を大幅に増やし、消費に回すことにより景気の拡大にも寄与することになります。